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戦力外通告の元プロ野球選手・木村昇吾が「無収入でもクリケットをやり続ける」理由

 昨年、戦力外通告を受けた元プロ野球選手・木村昇吾。内外野の守備、代走のスペシャリストとして平均在籍年数が9年に満たない厳しい世界で、15年間も活躍し続けてきた男が受けた非情な通告。しかし、さらに世間を驚かせたのは「クリケット」という耳慣れないスポーツへの転身だった。国内の競技人口はわずか3000人足らず。プロはおろか社会人チームすらない未開の地へ飛び込んだ元プロ野球選手が抱く夢とは?

木村昇吾

38歳、収入ゼロの日本代表


――なぜクリケットに挑戦を?

木村:昨年オフ、埼玉西武ライオンズから2年連続で戦力外通告を受けたとき、自分の中では「まだやれる」という感覚がありました。だから、合同トライアウトで「どこか獲ってほしい!」と思っていたのですが、声はかからず……。そんな折に、自分をよく知る記者がクリケットを紹介してくれたんです。

――進路には悩みましたか?

木村:いや、即決です。アスリートを続けられる選択肢がある以上、やらないで後悔するのだけは嫌だった。自分はまだ心も体もアスリートでしたから、5分で快諾しました。

――プロ野球でFA権を取得したほどの名選手が他競技へ転身するのは、非常に珍しいことです。

木村:思い起こせば、広島カープからFA宣言したときも同じ心境です。あの頃の自分は、試合終盤にどこにでも組み込める“ジョーカー”のような存在でした。その分、出場できないこともあり、最初は「くそっ!」と悔しがっていました。しかし、そのポジションに慣れるうち、「次、次」とあっさりしていく自分がいたんです。一軍でやれているし、年俸も4000万円以上ある。でも、ふと立ち止まってみると、現状に満足している自分に無性に腹が立ったんです。「お前、何考えてんの? こんなんで満足してんの?」と。アスリートとして、自分の限界を知らずに終わりたくなかった。「できる、できない」ではなくて、とにかく挑戦してみたかったんです。

――今回のクリケットへの転身も、自分の限界を知るための挑戦だと。

木村:戦力外通告を受けたあと、ありがたいことに社会人チームから兼任コーチの話をいただきました。ですが、兼任コーチだと100%アスリートではいられない。一方、クリケットならば、収入はゼロになるけれど100%アスリートでいられる。2つの選択肢を比べたとき、自分の中に迷いはありませんでした。

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野球で培った技術はもちろん通用するが、それだけではダメ

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