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家も仕事もない若者たちが流れ着く「貧困村」の実態

空き家密集エリアが新たな“ドヤ街”になる

 大野さんによれば、この地区はもともと空き家密集エリアで、それに目をつけた地場の建設会社が社員寮として転用を進めているという。そういった会社は複数存在し、彼の同僚だけで30人以上が周辺の空き家に住んでいるそうだ。 「僕らは毎朝5時に近所の神社に集まり、そこでバスに乗り込んで解体現場に向かいます。寮に住んでいるのは20~30代の男ばかりですね。高校中退者や借金がある人、無職で家を追い出された人とか、なにかしらの問題を抱えて流れてきている。普通の住民もいますけど、この界隈は僕らみたいな人のほうが多いくらいなので、まるで“ドヤ街”です。最近は若い女性を見た記憶すらないけど、遅くまで続く現場仕事で疲れ果てていて、それすらどうでもよくなってます」 貧困村 若者の大半は関東近県出身で、みんな一様に経済的に困窮し、住居費ゼロに惹かれて応募してくる。よく見れば軒先で作業着などを干している家も多く、こうなるともはや「貧困村」とも呼べる状態だ。そして大野さんの会社では管理職以外、ほぼ非正規雇用だという。 「昇給もなく、みんなだいたい手取り20万円ほど。そこから年金や保険料、携帯代、さらに奨学金の返済月5万円を引くと遊べるお金はほぼ残りません。といってもここではお金を使う手段がないので、それでも貯金できますけど」  周囲にはコンビニも飲み屋もない。最寄り駅までは徒歩で2時間近くかかり、1時間に数本のバスが唯一の公共交通機関だ。車を所持している同僚も少数だという。
貧困村

空き家密集エリアを分断するように国道が走る。各家の間には生け垣があり、隣家の住人が代わっても気づかない

「朝食はバスが寄るコンビニで買い、昼飯は支給されるほか弁。夕食は台所の床が腐っていて調理できないのでカップ麺ばかりです。夜中もハクビシンが屋根裏を走り回ってて寝られないんですよ……。こんな場所に住んでいると知られたくないし、友人や家族ともまったく連絡を取らなくなりましたね」  空き家対策とはいえ、人里離れたへき地に隔離された若者を生んでいるという側面があるのも事実。彼らが抜け出す日は来るのか。 ― [若者の貧困]どん底ルポ ―
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