更新日:2018年11月07日 23:25
スポーツ

元うつ病、43歳のキックボクサー・松崎公則 「常に弱気」な4冠王の闘い

「自分が強いなんて思ったことがない」と、常に弱気の4冠王

奥様

2年前に結婚した妻は「この人がうつだったということを、あえて気にしない」と大らかに接する

 松崎はこの王座戦の前に、4年ほど働いた非常勤公務員を辞めた。 「両方やるのがつらくなってきて。精神的に不安定になり、うつっぽい気持ちが出てきたんで」  現在の収入は、週3日のジムでのトレーナー業と、年末年始の郵便局でのアルバイト。整体を学んでいて、「自宅でいずれ開業したい」と話す。営業をしていないので、スポンサーはない。  松崎の場合、ファイトマネーは「新入社員の初任給分ほど」だという。現金の代わりに、試合のチケットを渡されて自分で手売りすることも多い。  2年前、同じジム生で看護師の女性と結婚した。彼女は「整体を学んで、働くのかなと思っていたけど……。でも、うるさくは言わないでいます」と明るく話す。 「自分が強いなんて思ったことがない。ベルトを獲ったのはただの結果で、若い選手と力で勝負しても勝てるわけがない。まわりの期待に応えられないことが怖い」と、4冠も獲得しながら、松崎は常に弱気だ。

「うつになっても40歳を超えても、ここまで回復できる」ということを示したい

練習風景

練習熱心な松崎のいつでも手を抜かない姿勢は、後輩ジム生の模範となっている

「でも、練習の時に気分が乗らなければ走るだけにするとか、自分とつき合えるようになった。キックをやって自分を出せるようになった。好きなことをやっていればいいんだなと。人間関係もだんだん広がってきた。  今まで、やりたいことがあっても、勝手に自分には無理だと思ったり、やりきる前に諦めたりしちゃった。でも、キックはやり切ってみたい。    うつ病になっても、ここまで回復できる。40歳を超えても、ここまでできる。それが同じような人たちの勇気になればと思っています」  43歳、うつの4冠チャンピオン(「元」になってしまったが)の活躍は、多くの人に希望を与えてくれる。 取材・文・撮影/遠藤一 試合写真/イーファイト ― 43歳うつのチャンピオン ―
1
2
おすすめ記事