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「脱がない私に価値はないの?」アラサーグラドルの苦悶と再出発

コールセンターでバイトし、彼にはフラれ

   こうして時は過ぎ、28歳か29歳の頃。当時の仕事はコールセンターのアルバイト、休日は酒を飲み歩き、趣味は「彼氏」だった。結婚しようと思っていたが、誕生日の3日前にフラれた。そこで、私の未来予想図は全て白紙となる。 吉沢さりぃ そんなとき、何の因果か失恋の後遺症で引きこもる私に「またグラビアをやらないか」という話が舞い込んでくる。いやいや、もう30歳手前の女が……しかも売れてなかったわけだから復帰しても話題にもならないんじゃないかと思う半面、やっぱり「TVに出てみたかったなぁ」という思いがこみ上げてきた。  そりゃあTVに出れるんなら出たい。もしも出れたら、こんな話がしたかった。  当時、飲みの場で過去の体験談をやや盛り気味にぶっちゃけていた私。たとえば、前述のようにグラドルになる予定が散々脱がされた挙げ句、1000万円でAVに出ないかと誘われた話や、枕営業を斡旋されて断ったら社長にブチギレられた話、普通の水着でDVDを出したら信じられないほど売れなかった話、TV番組のスポンサーの半裸のおじいちゃんに追いかけられた話など。  それらの話はどこでもウケて「深夜番組とか出れそう!」「素のキャラをもっと出せば売れてたんじゃない?」と数人からは言ってもらえていたのだ。  とはいえ、無名の私がいきなりTVに出れるほど甘い世界ではないことも重々承知していた。同時期に、ライターという仕事がやりたいと漠然と考えていた。なぜかは自分でもよくわからない。やりたいといってもコピーライターをやっていたわけでもなければ、編集部で働いた経験もない。ワードを使ったこともなければPCすら持っていなかった。

TVに出れないなら文章で書けばいい

 だから、「ひらめいた!」と言ったら大げさかもしれないけど……。  グラドルとしての良い経験も悪い経験も文章にしたら面白いんじゃないだろうか、 TVで喋る場がなければ書けばいいんじゃないだろうか——。  そう考えた私は、グラドルとして復帰することを決意し、ライターも始めてみた。  入り口なんて何でも良かった。とにかくライターとしての仕事が欲しかった私は、まず自分の経験を包み隠さずに書いた。いわゆる“ぶっちゃけキャラ”だ。安易だと思われるかもしれないが、現役グラドルが書く文章でお金を出してみんなが読みたいもの、興味があるものは、一般人が知り得ない“業界の裏話”だろうと思ったのだ。  とにかく私の名前でたくさん仕事をするために出来ることは全てやってみた。  そして、もう誰のせいにもしたくないから事務所には所属せず、フリーランスを選んだ。仕事をやるかやらないかは自分で決めて、自分で責任を取る。  当然、後ろ盾がないことで、トラブルが起きても処理が出来なかったり、脱がされそうになったり、怖い目にもたくさんあったが、その経験が全てネタとなりライターの仕事として活かせた。  ライターの仕事がキッカケで、生まれて初めてエキストラではなく地上波の番組にも出れた。テロップに自分の名前が入っていた。出たかった雑誌に出れた。事務所に入っていたときは、全て夢のまた夢だと思っていたことが一つ一つ形となっていった。
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水着だけでは生きていけない
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