更新日:2019年06月06日 14:54
仕事

街中をほふく前進で進む男。一体なにをしているのか?

警察が出動! もはやこれまでか?

匍匐前進

警察が出動! もはやこれまでか?

 警察だ。危険だからやめるようにと言われているらしい。もはやこれまでか。しかし、周囲の人々が、安全に気を配っていることを切々と説得した末、警察は去って行った。それと入れ替わるように、西荻窪で到着を待っていた応援の方が、待ちきれずにやってきた。「もう少し!すごいよ!」の新しい声は、沈んでいた空気に新鮮な風を流し込んできた。目を潤ませている人もいる。
匍匐前進

いよいよラストスパート。だが……

 あと300m、手拍子をはじめる人も現れ、それにつられて「頑張れ!」と湧き上がる声。佐塚さんに日が当たらぬよう、90度に腰を曲げながら日傘を差し出している方も腰を辛そうにしながら声をかけている。声援をうけ、ついに西荻窪駅のアーケードに入った。アスファルトに比べ滑りやすいために進みもよく、直射日光も当たらない。佐塚さんはスパートをかけた。周囲の声援も一層力が入る。

タイムリミットが来てしまう

 それでも時間は無情。ここでタスキリレーのタイムリミットが来てしまい、13:30に次の走者である若木くるみさんが「四つん這い」で吉祥寺を目指す。繰り上げとなってもアーケードを抜け、最後の信号を渡る。青信号のうちに渡りきるため、既にないはずの体力まで使って速度を上げた。渡りきった時には、しばらく突っ伏したまま動けなくなった。あと30m、エンプティマークを灯しながらズリズリと進む。泣いている人がいた。予定にはなかったが、サポートしている方が、救急箱から包帯を取り出し、急ごしらえのゴールテープが張られた。そして午後2時1分、佐塚さんはついに西荻窪駅にたどり着いたのだった。
匍匐前進

襷は繋がらなかったが、無事ゴール

 西荻窪の通行人からも拍手が沸き起こった。何のために!?と感じながら見届けはじめた、匍匐前進。実は、安直な意味づけなんて必要なくて、なんでもいいから「やり抜く」「やりきる」なかではじめて、その意味が理解できるのではないかと学ばせてもらった。  タスキは繰り上げとなったが、西荻窪ー吉祥寺を美術家の若木くるみさんが四つん這いで、吉祥寺ー三鷹を新人Hソケリッサのみなさんが走ってゴール。匍匐前進、四つ足、二足歩行という、生き物の進化と同じルートで駅伝芸術祭は、その意味を結実したのだった。<取材・文・撮影/Mr.tsubaking>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
1
2
おすすめ記事