ところが、お願いしていた面接が流れてしまった。驚くべきことに、神崎さんの会社そのものが取引禁止になったという。 「何が何だかわからなくて、まず君島さんにメールしましたが、返信がありません。そこで君島さんの上司に事情を聞いたところ、とんでもないことになっていたんです」 　君島さんは、なんと上司に「先日のイベントで神崎さんにセクハラされた」と訴えという。 「『神崎さんに強引に飲み会に誘われた、体を触られた、対応が気持ち悪い』と、報告したというんです。大嘘をつきやがってと怒りましたが、懸命に堪えて、アパレル会社を訪問してお偉いさんに謝罪しました」 　神崎さんは、誤解を解こうと言葉を選んで、セクハラを否定した。ところがその会社は、君島さんの報告を全て鵜呑みし、信用していたのだ。 「がっくりきて、帰社しました。グループの上長に今回の件を報告すると、君島さんが気に入らないと判断すると、取引先が次々と出入り禁止などの処置が下されていることが、業界でも評判になっているとのことでした。僕はなぜ嫌われたのか分かりません。彼女のお気に召さない行動をしたのかもしれませんね」 　気に入らないといった個人の感情だけで取引先を次々に切る採用者に、神崎さんは「なす術もない」と呟く。 　企業の人事部採用担当者がモンスターになってしまうと、人材紹介会社は大打撃だ。とはいえ、取引先がどんどんなくなるこのアパレル会社は今後どうするのか、すごく気になった筆者である。＜取材・文／夏目かをる＞コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛＆婚活＆結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ「恋するブログ☆～恋、のような気分で♪」