更新日:2019年10月18日 10:39
仕事

一流商社マンから生活保護寮へ。それでも「商社時代よりマシ」と言う深刻理由

「搾取する側にいるよりはマシだ」

転落 花島さんの入った施設というのが、実は数年前に、テレビや新聞でも報じられた「生活保護者向け」の悪徳施設。ホームレスを呼び寄せては生活保護を受給させ、そのほとんどを管理者が搾取する。いわゆる“生活保護ビジネス”と呼ばれるものだった。 「毎日、冷凍ご飯とインスタント味噌汁、ほか一品の三食が出てきます。それ以外は、三畳ぐらいの部屋でボーッとしているだけ。スマホを持っていたので、それで本を読んだりはしましたが、もう何も考えなくていい。途上国のことも仕事のことも何もかも忘れて……。死ぬのは怖かったですから、とりあえず生きられる環境があるだけよかった」  貧困ビジネスの被害者として、金銭だけでなく思考力まで奪われた花島さんだったが、それでも「搾取する側にいるよりはマシだ」とさえ思えたという。そして施設入居からすぐ、貧困ビジネスだとして騒動になり、花島さんはそこを追い出された。そして、生活支援を行うNPO関係者から声をかけてもらい、現在の寮に移り住んだ。 「今は、就労支援施設で社会復帰のための訓練を受けています。富や出世を追求する社会は僕には合いませんでした。今は、社会福祉士になって、近くにいる困った人の手助けをできるような仕事に就きたいと思って、勉強しています。こんなことに気がつくまでに、自分の能力を過信していたのか、何十年もかかりました」  時代の流れに翻弄され、厳しい境遇にいる花島さんだったが、その目には輝きが戻ったかのようにも見えた。<取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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