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志村けんが語った酒とコントと人生「ひとりじゃなく全員でウケるのが大事」

アイドルもウケると笑いの才能が花開く

――志村さんが制作陣とも酒席を共にするのは、「全員でウケる」という考えがあるからなのでしょうか? 志村:そうですね。平等ですよ。先輩後輩とか、そういう縦の関係を気にしていたら、コントってできないと思うんです。田代君や桑野君とでバカ殿をやり始めたときも、彼らは若くてシャイだから、はじめは委縮している。そういうとき、本番のあとに酒を飲みながら「俺が先輩だとか気にしなくていいよ。敬語も使わなくていいから」って、少しずつほぐしてゆく。それでその場はいい感じになるんだけど、現場でまた元に戻っちゃう。壁を取り払うのに随分と時間がかかりましたね。 ――志村さんが若い頃は、ドリフの先輩方と飲んだりされたんですか。 志村:初期の頃はなかったけど、地方に行ったときなんか、ホテルでいかりやさんに「おい、志村行くか」ってバーに誘われることがあって。加藤さんや仲本さんはお酒をあまり飲まないし、ブーさんはタダのお酒しか飲まないからね(笑)。一緒に飲んでるときに「俺、しんどいんだよ。お前、やってくんねえか」っていかりやさんに言われたことがあって。実は『全員集合』が終わるまで半年くらい、僕が台本を作ってましたね。 ――えっ!? それは初耳です。 志村:いかりやさんに言われて最初にやったのは、5軒のアパートで全員早変わりだけでやるっていうコント。みんなが出てくる順番とか、裏にカメラを置いて着替えを見せようとか、いろいろ考えましたよね。 ――メチャメチャ名作じゃないですか! いやあ、後期のコントは志村さんが作っていたとは。また、志村さんはアイドルにもコントをやらせますが、彼女たちからどうやって笑いの才能を見いだすのですか? 志村:まず、よく笑うコですよね。昔はいきなり本人の目の前で屁をしたり(笑)、そうやって試していました。次に、とんでもないメイクをさせて、そのコがウケるようにコントをやらせる。そうすると、「アイドルがそこまでやるんだ」っていうギャップがあるからウケる。そっからガラッと変わりますね。例えばいしのようこなんて、シャイでお嬢様で、ぜんぜんやりたがらなかったんですよ。でも一度ウケる喜びを知ると、そこから才能が開花しますね。 ――最近では、どなたが? 志村:やっぱり、みひろちゃんですね。まず見た目がかわいいし、求めることを、さらっとやってのけた。しかも余計なことをしないで引くところは引く。芸人だと、こうはいかない。もうちょっとウケが欲しいと思って、つい余計な、変なことをしちゃうんです。だから彼女には『志村魂』にも出てもらったんです。 ――彼女に笑いの才能があるって、志村さんじゃないと気がつかなかったと思います。そういった人心掌握術はどこで養われたのですか? 志村:やはり、ドリフターズ時代ですね。ずっと一緒にいるからメンバーの気持ちがアップしてる、ダウンしてるって、わかってくるんですよ。例えば加藤さんが「もう舞台に出てしゃべりたくない」って、気持ちが落ちてた時期があったんです。そこで加藤さんに「セリフがなく、動きだけでやれることをしませんか?」って提案したんです。音楽と振り付けを僕が考えて、そうやってできたのが「ヒゲダンス」。 ――えっ! ヒゲダンスって、そんなきっかけでできたのですか? 志村:加藤さん、「志村、あのとき、お前があれやろうって言ってくれなかったら、俺きつかったぜ」って言いますもんね。とはいえ「次の週のネタどうしよう」って、別の悩みを抱えることになるんだけど(笑)。 ――ヒゲダンスがドリフを救ったんですね。しかしそこまで人を思いやる性格なら、恋人やお嫁さんがいらしてもおかしくないと思うんですが。 志村:ちゃんとしすぎるのかもしれない。結婚願望もあるし、子供も欲しいんですけどね。以前は、女性とお付き合いを始めるとき、相手の親御さんに挨拶にいってました。芸能人だから、親御さんとしては「遊ばれるぞ」って心配するじゃないですか。そこで「ちゃんと付き合います。そんな変な男じゃありませんから」って誠意を見せて、安心させたかったんだよね。気をつけないと、相手の親のほうが年下だったり。で、一回だけ別れる前にも挨拶にいった。 ――お別れするときまでですか!? 志村:「もうお付き合いが無理みたいなんです」って。そしたら向こうの親御さんが娘に「このバカタレが!」って怒りだして。「いやいや、僕の責任もありますから」ってなだめて。やっぱり、変な男だよね(笑)。 取材・文/吉村智樹
京都在住。ライター兼放送作家。51歳からWebライターの仕事を始める。テレビ番組『LIFE 夢のカタチ』(ABC)を構成。Yahoo!ニュースにて「京都の人と街」を連載。著書に『ジワジワ来る関西』(扶桑社)などがある。X:@tomokiy
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