「休みはない」がやりがいに燃える…コロナ禍で目を輝かせる人たち
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。感染者は日本国内で1万人を超え、学校は軒並み休校、仕事はリモートワークに。自宅から出る機会も最小限に抑えねばならず、多くの人々が鬱屈した日々を送っているはずだ。
しかし、このパニックの最中で「生き生き」しているという人たちも存在する。
「初めて“感染症病棟”の看護師でよかったと感じています。3月から休日はほとんどないし、朝から深夜0時まで仕事をしていて体は本当にキツいはずなんですけどね」
こう話すのは、東京都内の病院に勤務する看護師の中野歩さん(仮名・30代)。現在、過酷な現場の最前線で戦う、まさに「コロナファイター」。終わりのない激務に心身ともに衰弱しているのかと思いきや……。
「正直、日本で感染症の専門医、感染症看護がここまで注目されることは初めて。スポットライトが当たるのは外科や救急などで、ドラマの題材にもなるような“陽のあたる”人たちを横目に、感染症に携わるなんて地味だと思っていました。外科の看護師が“手術中に血を見ると興奮する”なんてこともあるそうですが、私も今まさにそんな感じ」(中野さん)
今まであまり目立たなかった自分たちがここにきて引く手あまた。「絶対に必要な人」とされていることに発奮し、やりがい以上の使命感が、中野さんを突き動かしているのだと言う。
都内の報道番組制作会社のディレクターである一ノ瀬勇輝さん(仮名・40代)もコロナ騒動の中、そんな使命感に燃えているひとり。
「医療現場に興味があり、これまでも医療ネタばかり扱ってきました。ただ、膨大で緻密な取材が求められる一方で、放送できる機会は少ない。大きな医療事故とかが起きない限り、平時だとテレビ局やプロデューサーに売り込んでも採用されません」(一ノ瀬さん、以下同)
実は一ノ瀬さん、自身が培った人脈で、昨年の暮れには、中国・湖北省で「未知のウイルス」が発生している事実を掴んでいた。プランを描き、プロデューサーのGOサインさえもらえれば、すぐにでも現地に飛ぶ用意をしていたと言うのだ。しかし、プロデューサーは企画書を一瞥するだけ。
「中国で局地的に発生した変な病気でしょって。まあ、確かにそうです。こういうネタは、内容が深刻であればあるほど伝わりにくいし、日本人は興味がない。放送しても数字(視聴率)も上がらない」
例のプロデューサーが血相を変えて飛んできたのは2月に入ってから。ちょうどダイヤモンド・プリンセス号内で複数の感染患者が確認され、横浜港に着岸したあのタイミングだった。
「一ノ瀬くん、すぐ取材して、なんでもいいから企画出して、知り合いの医者、研究者、誰でもいいから取材して……とすごい勢いで。おかげで、3月から今まで休みは一切ありません。普段ならあり得ませんが、パッケージになっていない企画やネタ案ですら『カネを出す』と言ってくれています。普段は日陰者でしたが、こんなにやりがいを感じる日々はありません」
市民の「命にも関わる」大切な情報をいち早くキャッチし報じる行為は、先述の医療従事者にも似た「やりがい」をこれ以上なく噛み締めさせる。
世間から「絶対に必要な人」とされている
休みはないが「やりがい」に燃えている
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