仕事

「休みはない」がやりがいに燃える…コロナ禍で目を輝かせる人たち

みんなが不幸な世界を喜ぶ、身勝手な人も…

絶望 そして最後に、前出のふたりとは別の意味で「生き生き」している人物を紹介しよう。  この状況を「待っていました」とばかりに、身勝手な喜びを感じているのは、世間的には“負け組”の烙印を押されて悶々と過ごしてきた埼玉県内の実家暮らし、独身会社員の鹿島憲一さん(仮名・38歳)だ。 「なんとなく大学出て就職しましたがね、この歳まで結婚もできず、会社では出世街道からも思い切り外れて、38歳にしてすでに閑職。親も後期高齢者になって、あと数年で介護もしなきゃダメ。希望がない人間にとっては、こういうガラガラポンがいちばんいい。スクラップアンドビルドって言うのかな?」(鹿島さん、以下同)  鹿島さんにとって納得がいかないのは、同じ年で同じ会社の同僚たちが、結婚し子供を産み、車を買って家を買い、幸せに過ごしていることだ。同僚たちには燦然と輝く未来がある。子育ての楽しみ、老後の楽しみもあるだろう。  しかし自身にはそのいずれもがない。親を看取る頃には、自身も高齢者。仕事ができないぶん、老後を楽しむ貯蓄だってできないだろう。人生を、世界をリセットしてほしい……。  うだつが上がらないのを世界のせいにされても困るし、コロナで生活苦に陥った自営業者への想像力も彼にはないらしい。 「いっそ戦争でも起きればいいのに、っていつも思っていました。戦争になれば、みんなが同じように不幸になるでしょ。いやむしろ、幸福だった人が不幸になる振れ幅は、もともと不幸だった俺らよりデカいわけで。そういう人がコロナに怯える姿を見ていると、普段いい思いをしてきたツケだよ、と思うね。嫌な性格してるでしょ、だからこんな人生送ってるんだけどね(笑)」  不幸を減らそうとやりがいに燃える人もいれば、みんなでもっと不幸になろうと目を輝かせる人がいる。得体の知れないウイルスが、人間の本音、本性を嫌というほど露わにさせている。<取材・文/森原ドンタコス>
1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ