更新日:2020年09月29日 14:34
仕事

憧れの職業に就いた私がなぜこんな目に…コロナで狂った歯車

「収入がゼロに」突きつけられた現実

キャンペーンガール「3月分から収入はゼロ、全くゼロの状態でもう半年です。最初は、事務所の社長が何か仕事をくれるとか、最悪お金を配る、と言っていたのですが……」  都内の芸能プロダクションに所属する中山かおるさん(仮名・20代)は、いわゆる「キャンペーンガール」。国内外で行われる企業の展示会に出演したり、ショーモデルとしてイベントに呼ばれたりもした。 「キャンペーンに出ると言っても、レベルがあるんです。例えば、国内のイベントにしても、どのイベントに出るかで格があります。私は格が上の方で(笑)、同じ事務所の子が国内のマイナーイベントに出ているのをみて、正直ホッとするというか……」(中山さん、以下同)  キャンペーンガールと言っても、立場は千差万別。従って収入も違う。 「私の場合は事務所からもらえるお金の他に、お小遣いというかお手当てもいただきました。別の子は、クライアントに食事に連れて行ってもらえるだけなのに、私には食事プラス交通費もつく、みたいな。そういった副収入が結構ありました」  ところが、やはりコロナ禍によって大規模なイベントは全て中止に。入っていた予定は全てキャンセルとなり、ただただ、自宅に引きこもる日々が続いた。 「4月の最初に国内のイベントで仕事があると言われたから話を聞いたら、地方の産業展。ムリ!って断ったけど、仕事の依頼はそれが最後でした」(中山さん)  結局、中山さんが格下に見ていたという仲間たちは、食べるために件の産業展の仕事へ。その仕事がきっかけで、とある省庁関連の仕事が事務所に舞い込んできたが、中山さんに声がかかることはなかった。 「会社なんか何にも頼りにならないと思って、よくしてくれていた会社の方に連絡を取ったりしたんですが。どこも仕事がないどころか、俺の秘書になれと笑いながら言ってくる人もいて……。  私、一応きちんと仕事はしてきたつもりでした。美容にもプロポーションづくりにも努力したし、どんな場所に出ても見劣りしないよう、話し言葉の勉強もしました。でも結局、仕事がなくなると、何にもできない『ただの人以下』なんだなって」

「誰にでもできる仕事」ではない仕事があだとなり…

 中山さんの仕事は専門的で、決して「誰にでもできる仕事」ではなかった。  ただ、その仕事がなくなれば中山さんも必要とされない。気がついた時には、専門的な仕事しかできず、もはや「誰にでもできる仕事」もできなくなっていた。この現実に、中山さんのプライドはズタズタに引き裂かれた。 「吹っ切れるまでに半年かかりました。いつ再開するかわからないイベントを待ち続けるより、私にしかできない仕事を自分から探しに行きます。今は家業を手伝いながら、栄養士になるための学校に通っています」  新型コロナウイルスが白日のもとに晒し出した現実。これを不幸だと悲しみに暮れ続けるか、きっかけとして捉え行動に移るか。新しい時代を生き抜こうと、多くの人がスタートを切っている。<取材・文/森原ドンタコス>
1
2
おすすめ記事