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都会で大魚がバンバン釣れる “東京アウトドア”シーバスフィッシング

文/椎名基樹

高層ビルに囲まれて釣りを楽しむ

 ひとりキャンプ芸人が人気である。その火付け役がヒロシだ。テレビに出演することが苦痛でパニック障害を発症し、タレントとしての活動は開店休業中だったが、かねてよりの趣味だったソロキャンプの模様をYouTubeにアップすると、キャンプファンの間で人気が広がり、ヒロシは再ブレイク果たした。現在日本は、第二次アウトドアブームだそうで、その時流にうまく乗ったようだ。正直者に神様が手を差し伸べた昔話みたいで(笑)、なんだかほっとするエピソードだ。  最近はめっきり涼しくなって、季節はすっかり秋になった。アウトドアレジャーのハイシーズンである。そして私たち「ルアーマン」にとってもシーバスフィッシングの待ちに待ったベストシーズンがやってきた。私は毎日タイドグラフとにらめっこして、そわそわして何も手につかない。
シーバス

秋シーズン到来。まるまる太ったシーバス

 シーバスとは鱸(スズキ)のこと。それをルアーで釣ることが、東京のアウトドアスポーツとして、密かに定着している。シーバスフィッシングは東京都内でできる本格的アウトドアスポーツである。そして、東京湾はシーバスの魚影が日本一濃く、東京がシーバスフィッシングの1番のメッカでもある。  東京湾は今浄化が進み、非常に魚影の濃い漁場となっていると言う。汚水を浄化してから海に捨てるようにしたそうだ。実際ボートで出てみるとシーバスをはじめサワラや鯛、時にブリまで釣れる。
あるポイント

あるポイント。どうだい? アーバンだろ~?(杉ちゃん調)

日本は「ルアー製作」なら世界唯一になれるかも

 東京の最もポピュラーなシーバス釣りのポイントは奥湾と呼ばれる、台場や豊洲あたりの埋立地の運河であり、そびえ立つ近代的超高層ビルの中で、ときには80センチを超える大魚が釣れるのだからそのギャップがたまらない。こんな都市東京以外にあるのだろうか? 魚量の多さだけでなく、ルアーフィッシングのカルチャーが、日本には深く根付いている。世界の中でもそういう国はたくさんないはずだ。
ボート釣り

ボート釣りはこんなのがバンバン釣れる

 日本製のルアーは非常に品質が良い。ダイワ、シマノといった大企業の釣りメーカー以外に、多数のルアー専門メーカーが競い合うようにルアーを開発している。日本のルアーの品質は、世界一だろう。と言うか多分、このようなルアーメーカがしのぎを削る状況は、日本が世界唯一なのではないだろうか。
ルアー

何個あっても欲しくなっちゃうのがルアー

 静岡県の焼津市にある「DUO」というルアーメーカーを見学したことがある。本社と製作所を兼ねた建物はとても大きく立派で何よりおしゃれだった。ルアーの性能を確認するための魚が放たれた、巨大な水槽が設置されている。塗装など細かい手作業が多いため、たくさんの女子社員が働いていた。そのため社内は非常に明るく華やかだ。会社の中でパトラッシュみたいな、巨大な犬が2匹飼われているのには驚いた。実に垢抜けた会社だった。  DUOはもともと釣り好きが自作のルアーを作るところから始めた会社だ。日本には「ルアーサクセス」が存在する。趣味の追求が結果的に大きな雇用をも生んでいる。  ’80年代では世界一だった日本の通信技術やIT技術が、あっという間に世界に追い越されてしまった。菅新総理は、その部分の改革を、真っ先に打ち出した。日本が遅れをとった原因はかつて世界一だったことにあぐらをかいた保守性であると指摘する人もいる。  しかしルアーメーカーの異常な発達は、そんな日本社会の「平和ボケ」が後押しした結果なのかもしれない(笑)。社会のデジタル化の遅れは、政治家や大企業の経営陣の老害が原因に思え「何やってんだ!」と私も苛立ちを覚えたりする。一方でルアー会社のガラパゴス的発展などは、社会の呑気さの表れのような気がして、居心地の良さを感じたりもする。いっそ「世界一呑気な国家」を目指してくれても私は一向に構わないが。
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恐怖! 80センチのエイが釣れちゃった
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina

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