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都会で大魚がバンバン釣れる “東京アウトドア”シーバスフィッシング

恐怖! 80センチのエイが釣れちゃった

 ルアーフィッシングはサーフィン、スケートボード、スノーボードと同じくアメリカから持ち込まれたレジャースポーツだ。これらアメリカンレジャースポーツの特徴は日常の風景が、突然非日常の遊び場に変わりるところだ。何の変哲もない場所が冒険の現場となる。私はもっぱら電動チャリで30分ほどのポイントで釣りをしている。そして、ハマると「もう俺これだけやってたいな」と思えるほどの人生のウェイト占めるようになる。
イシダイ

イシダイも釣れます

 釣りを始めるようになって東京の自然の雄大を知った。深夜、多摩川の川べりを歩いていると草むらの中から、のそのそとタヌキが姿を現す。タヌキって小さくてポメラニアンみたいでめちゃめちゃかわいい。夜の空を飛ぶアオサギは巨大で恐竜のようだ。奥湾では両翼の幅が80センチはあろうかというエイが釣れてしまった。めちゃくちゃ怖かったけれどルアーは1個2000円近くするので、勇気を振り絞ってハリを外して回収した。
エイ

奥湾で釣れたエイめちゃ怖かった。流木で押してなんとか海に返した

 2月の終わりになると「バチ抜け」と呼ばれる現象が運河や河川で発生する。ゴカイやイソメといった水生昆虫が産卵のため川底から這い出して、川の流れを埋め尽くすのだ。それを捕食するために集まるシーバスを狙うのが、シーバスフィッシングシーズンの始まりを告げる祭りである。虫で埋め尽くされた川面なんて話だけ聞けば気持ち悪いかもしれないけれど、実際その光景を目にすると圧倒される。「現実のナショジオ体験」だ。これが大都会の真横で行われていることに感動する。
水生昆虫

川を埋め尽くす水生昆虫の大群

私が釣りをする理由は……

 野生動物に出会うとなぜだか生きる気力のようなものが湧いてくる。不安や心配が薄らぐ気がする。なぜだろう。生きることに愚直な姿を目の当たりにするからだろうか。  また、ひとりになりたいことも、釣りをする理由だとが気がついた。ひとりキャンプをする人たちも「孤独の快感」を味わいたいのではないだろうか。孤独は時に苦痛であるが、時に快感にもなる。自然の中で一人きりでいると心が静かになっていくのがわかる。それがすごく気持ちいい。深夜に草むらの中に身をおくと五感が研ぎ澄まされ静かな興奮が訪れる。アウトドアの魅力は、自然の中に身を置くと、いつもと違う距離で自己と向かい合えるところにあるのではないだろうか。
80センチオーバー

バチ抜けシーズンに釣った、自己最高の80センチオーバー

 とまぁいろいろ御託を並べたが、私が釣りをする理由は、釣ったときの興奮が忘れられないからだ。完全なアドレナリン中毒だ。そんな中毒者が他にもたくさんいるようで、今有名なポイントをゲットするのは、早いもの順だ。深夜竿を振っていて、自分1人だと思ったらどこからともなく「バシュッ!」と誰かの釣竿が音を立てる。  山奥まで行かずとも東京にいても充分にアウトドアを楽しめる。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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