仕事

「もう二度と配達やるもんか」40代Uber Eats配達員の本音と人生

心の中で「ゴール!」と叫んだ

那覇

那覇の街の光が見えてきた

 フェリーは予定通り、翌日の午後7時に那覇港に到着した。建物の上部に取り付けられた照明が港全体を明るく照らし、雨に濡れたコンテナの表面にもその光を反射させていた。  フェリーから降りてコンクリートで固められた地面に足をつけた。その瞬間、「ゴール!」と心の中で叫んだ。これでやっとウーバーから解放された。アメリカの大学の卒業式よろしく、ウーバーのバッグを空に向かって放り投げたいような気分だった。  この日はとりあえず「リトルアジア」というゲストハウスに泊まることにした。鹿児島で泊まったゲストハウスの系列である。

二度と配達なんてやるもんかと思っていたけど…

国際通り

小雨の降る那覇の国際通り

 那覇の国際通りからほど近い場所に位置するそのゲストハウスに到着すると、共同のリビングでたくさんの人がわいわいと騒いでいた。ここまで旅してきてこんなに賑やかなゲストハウスははじめてである。その中のひとりの青年が僕のウーバーのバッグを目にして訊いてきた。 「もしかしてそれウバッグですか?」 「そうです。ウーバーの配達で旅費を稼ぎながらここまで旅してきたんですよ」 「まじッすか! 私も同じです。ウーバーの配達をしながら日本国内を自転車で旅してるんです」 「嘘でしょ!?」  なんという偶然だろう。しかし、話はこれだけでは終わらなかった。 「どうしてそんなことをやろうと?」 「YouTubeのネタとしても面白いかなと思って」 「私もYouTubeやってます!」 「まじで!?」  類は友を呼ぶ。その諺をしみじみと実感せずにはいられなかった。 「じゃあ、今度いっしょになにか撮影しましょうよ」 「いいですね。なに撮影します?」 「那覇でいっしょにウーバーの配達をしてその売上で勝負するというのは?」 「面白い! やりましょう」  ウーバーの配達なんてもう二度とやるか! そう思っていたのに、那覇に着いて早速またやることになってしまった。  人生はいつもこうだ。いつも自分の予想や期待とは違うほうに進んでいく。自転車を鹿児島で処分してきてしまったことを少し後悔した。
小林ていじ

2020年10月5日、所持金3万円で東京を出発した筆者・小林ていじ。「Uber Eats」の配達で旅費を稼ぎながら、自転車で沖縄を目指した。2021年1月22日、無事にゴールを迎えた(撮影/藤井厚年)

【107日目】 <支出> 食費:1726円 <収入> 4948円 残金:1万6815円 【108日目】 <支出> 食費:1668円 洗濯乾燥:300円 合計:1998円 <収入> 5550円 残金:2万397円 【109日目】 <支出> 食費:2788円 自転車処分代:500円 フェリー代:1万4880円 合計:1万8168円 <収入> 0円 残金:2229円 【110日目】 <支出> 食費:2120円 <収入> 0円 残金:109円 <取材・文/小林ていじ>バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeで「ていじの世界散歩」を検索。
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