旅するUber Eats配達員、宮崎の恋愛パワースポットで“彼女”を思う
僕は普段、日雇い派遣などの仕事で稼ぎつつ、時間を見つけてはタイなどの東南アジアを中心に旅してきた。この状況では海外旅行には行けそうにないが、日本国内ならば比較的自由に動けるようになってきている。旅がしたい。でも、社会の底辺で生きる僕にはお金がない。そこで「Uber Eats」の配達で稼ぎながら国内を自転車で旅するという方法をとることにしたのである。
旅に出て96日目、僕は宮崎市にいた。泊まっているゲストハウスは青島駅の近くにあり、宮崎市のウーバーの配達エリアからは外れているため、南宮崎駅まで約30分かけて電車で移動。それから駅に隣接する駐輪場に止めてあった自転車に乗り、配達を開始した。
宮崎市の配達エリアは宮崎駅と南宮崎駅を中心としたかなり狭い範囲である。それでもマクドナルドやスターバックスなど人気チェーン店からの配達リクエストが途切れることなく入ってくる。
ヤシの木の並ぶ南国のような景観の街中を軽快に走った。女性とすれ違うと、そのたびに僕の視線はついそちらに向いてしまう。漫画やドラマじゃあるまいし、奇跡の再会なんてあるわけないのに……。
97日目。配達を休んでゲストハウスからすぐ近くの青島を観光することにした。ビロウジュなどの亜熱帯性植物が多く茂る周囲1.5キロほどの小さな島で、島全体がパワースポットと言われているらしい。
島までは橋で渡れるようになっているのだが、その橋のたもとに一台のトゥクトゥク(三輪タクシー)が止まっていた。島の中心部にある青島神社のあたりまで運行しているというので、乗せてもらうことにした。料金はチップ募金制で、チップを入れるボックスが客席に備え付けられていた。
トゥクトゥクが走りはじめると、冬の冷たい空気が頬を打ちつける。透き通るような水色の空の下には藍色の海が広がり、橋を渡り切ったあたりからその海面から「鬼の洗濯板」と呼ばれるゴツゴツとした奇岩が隆起するようになった。
それにしても、宮崎でトゥクトゥクか……。いろいろと重なるものがあった。
“奇跡の再会”なんてあるわけないのに
トゥクトゥクで島を走る
1
2
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
記事一覧へ
記事一覧へ
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ