「もう二度と配達やるもんか」40代Uber Eats配達員の本音と人生
僕は普段、日雇い派遣などの仕事で稼ぎつつ、時間を見つけてはタイなどの東南アジアを中心に旅してきた。この状況では海外旅行には行けそうにないが、日本国内ならば比較的自由に動けるようになってきている。旅がしたい。でも、社会の底辺で生きる僕にはお金がない。そこで「Uber Eats」の配達で稼ぎながら国内を自転車で旅するという方法をとることにしたのである。
旅に出て107日目、僕は鹿児島にいた。ここでのウーバーの配達の収入はそこそこ好調な日々が続いており、108日目には沖縄県那覇市までのフェリー代と船内での食事代を十分に稼ぐことができた。
109日目。那覇行きのフェリーが運行している鹿児島新港に向かう前に自転車屋で自転車を処分してもらった。那覇に着いたらもうウーバーの配達をやるつもりはないので、ここで自転車は必要なくなるからである。
この旅が終わりを迎えることでなにがいちばん嬉しいかといえば、これでやっとウーバー配達員を辞められるということだった。プロモーション(通常報酬にプラスされるボーナス)がまったく付与されなかったという理由も大きいのだが、この旅の間は1日平均5000円程度の稼ぎにしかならなかった。そんな仕事を今後も続けていきたいなんて思うわけがないのである。
鹿児島新港発那覇港行きのフェリーに乗り込んだ。出港は午後6時、到着は翌日の午後7時なので25時間もかかることになる。
僕の予約した2等和室は相部屋になっており、大広間に布団が何枚も敷かれている。コロナ禍の状況とあって隣との間隔は布団1枚分空けられていた。そこに荷物を置いてから船内のレストランで唐揚げ定食を食べ、自販機で缶ビールを買って飲んだ。
ほろ酔いで外部デッキに出るとすでにどっぷりと日が暮れていた。照明で照らされた白い防波壁の向こう側には空と海の区別もない真っ暗な空間が広がっている。沖縄に着いてからの予定はなにもない。泊まる宿さえもまだ決めていなかった。その空っぽの中を波の音と生温い風が通り過ぎていく。やがて小雨がポツポツと頬を打ちはじめたが、それさえも心地よく感じられた。
那覇港行きのフェリーに乗る
ウーバー配達員を辞められることがうれしい
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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