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ドラッグストアで「なぜPCR検査を受けられないの!」疲弊する薬剤師

クレーム件数はコロナ流行前に比べて15倍以上に

ドラッグストア さらに、新型コロナの治療薬候補「アビガン」が報道で騒がれると、「置いてあるか」などの問い合わせもあったそうだ。クレームのような感じではなかったそうだが、コロナで不安を感じる人が多い証左ともいえる。  上野さんの店舗ではコロナ流行前は1か月2件程度のクレームだった。単純計算すれば1年間で24件。しかし去年は1年間で受けたクレームは370件と15倍以上にも跳ね上がった。細かいクレームはもはや共有していないそうで、実際の件数はさらに多い可能性も。 「以前は商品に不良があったなどのことがなければクレームにならなかったんです。でもコロナが流行してからは、気軽に、と言っては語弊があるかもしれませんが、簡単にクレームをつけてくる人が増えたように感じます。商品が手に入らないストレスや、コロナ禍への不安を店員にぶつけているのでしょう」

ドラッグストア店員がもっと評価されてほしい

 従業員も人間なのだ。カスハラは上野さんにとって大きなストレスとなっている。上野さんの妻である優子さん(40代・女性)が話す。 「夫は、クレームの対応に追われた日はいつも疲れた顔で帰ってきていました。繁華街にあるインバウンド向けの大型店舗に勤務しているので、コロナ禍初期から外国人の旅行者の接客をしていました。また、買い占めやクレーマーが話題になった時は、その相手をして……。普段はあまり仕事の話をしない夫が時々ぼやくので、とても大変そうだなと思っていました。緊急事態宣言下でも店を閉めることなく頑張り続けてきたドラッグストアの店員さんたちも評価されてほしいですね」(優子さん)  上野さんは去年1年間を振り返り、「どうか相手の立場になって考えて」と訴える。 「私たちも売れるものなら皆様にお売りしたいのですが、入荷の関係でどうしても無理なこともあります。現状を正しく把握して自己中心的な考え方をやめていただければと思います」(上野さん)  上野さんは理不尽な要求に耐えながらも、「自分の仕事がみんなを助けている」「人助けをしている」という自負を持って今日も働いている。<取材・文/星谷なな>
5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き27歳。 たまに写真も撮ります。
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