仕事

コロナ失業の元キャバ嬢が見出した活路「最初は時給換算で50円くらい」

うまくいかなくても“継続すること”の大切さ

ライブ配信中の様子

ライブ配信中の様子。季節のイベントに合わせてコスプレすることもあるとか

「キャバクラでは、ナンバーワンになったことがあります。その理由は、単純に“継続すること”ができたから。うまくいかなくても堪える。絶対にナンバーワンを獲るまで辞めないと決めていました。ライバルが多くても、ほとんどの人が途中で諦めてしまったり、他店に移籍してしまったり。だから、続けることができれば、いつか自分もPocochaのランク上位に立てるんじゃないかって」  ぴなこさんは「昔から男勝りの負けず嫌いだった」。しばらくは貯金を取り崩しながら生活した。 「意外と配信外で費やしていた時間が長くて。すでに活躍しているライバーの配信を研究して、いかにしてリスナーを増やすのか、飽きさせないためにはどうするべきか。リスナー自身がライブ配信していることもあるから、お礼の意味を込めて見に行ったり。それこそ最初は、時給換算すると50円ぐらいだったんじゃないかな(笑)」  試行錯誤を繰り返して半年ほどが経った頃、ようやく光明が見えてきた。キャバ嬢時代に比べれば収入は落ちたが、なんとか人並みに生活できるレベルになったという。今まで培ってきた接客術が活きた部分もある。 「やっぱりコミュ力は大事だなって。たとえば、人を覚えること。キャバクラなら、髪を切ったね、今日のネクタイは素敵だね。Pocochaなら、相手の容姿は見えないけど、アイコン写真が変わったね、名前に絵文字がついたね、とか。小さな変化に気づけるかどうか

リスナーの顔は見えないけど“気持ち”が介在している

ぴなこ

現在はライブ配信事務所「pino live」に所属し、ライブ配信アプリ「Pococha」で活動するライバーに転身。アプリ内のユーザー名「ぴなこ」で検索

 ライブ配信に手応えを感じつつもキャバクラとは違った苦労もあるという。 「ひとりで複数の相手をしないといけない。途中から参加してくるリスナーもいるけど、同じ話を繰り返すわけにもいかないので。会話のテーマも難しい。私はゴルフが好きなのですが、あまりマニアックすぎても通じない。みんなで楽しめる話題が何なのか常に考えていますね」  アプリ内では定期的にイベントが開催されており、ライバー同士で競い合う。リスナーたちと協力して作戦を立てるなど、「団体競技のスポーツに近い」と話す。相手の顔が見えない空間ではあるが、次第に人間関係も生まれてくる。リスナーとは基本的にコメント上でのやりとりだが、そこには確かに“気持ち”が介在しているんだとか。 「匿名だからこそ、性格の奥の部分が出やすいんです。ガツガツとコメントする人もいれば、人見知りでそれができない人。まわりに気を遣う人だと、コメントもめちゃくちゃ考えてから送るみたいで。  ライブ配信を始めて約9か月ですが、その間にギフター(※課金アイテムをたくさん使って場を盛り上げてくれるリスナー)が離れてしまって落ち込むこともありました。ほぼ毎日配信しているけど、あたたかいコメントで逆に励まされることも多かったです」  今年に入ってから再び緊急事態宣言が発出、そして3月7日まで延長されたが、ぴなこさんに焦りの色は見えない。  じつはインタビュー前、ぴなこさんのライブ配信に潜入していた記者。彼女は、こちらがPococha初心者であることを察し、手描きのボードなどを使って丁寧に仕組みを解説してくれた。その姿は、もはやキャバ嬢というよりも、“ライバー”そのものだった。かつての客が見たら驚くかもしれない。 「キャバ嬢だった頃と“まったく別のキャラ”なので恥ずかしいんですけどね。今はライブ配信が楽しいので、今後はインスタグラムと併用してゴルフの魅力を発信できるようなインフルエンサーになりたい」  コロナが世界を変えた。そして人生の転機を迎え、彼女はいま新しい夢に向かって歩み始めている。<取材・文/藤井厚年、撮影/長谷英史>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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