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「女生徒との接し方がわからない」セクハラ認定におびえる教師たち

言葉を武器にする生徒たちに複雑な思いも…

学校 世に溢れる「パワハラ」や「セクハラ」という言葉は、子どもたちの目や耳にもしっかり届いている。そして一部の子どもたちがそれらを「盾」、いや「武器」にして、困り果てた教師たちをさらに追い込むというケースもある。 「私はまだ若く、生徒と同じ目線に立って指導を行っているつもりでしたが、それがどうも舐められる原因になっているようで」  公立中学教諭・本間雄一さん(仮名・20代)は、教員歴5年未満という新人教師。その特権といえば、生徒と年齢が近いぶん「友達のように」生徒の会話の輪に入っていけることだと思い、気さくな雰囲気で接してきた。しかし、この1~2年で、生徒たちが大きく変わったように感じているという。 「セクハラやパワハラがダメ、という風潮を逆手に取り、冗談半分でセクハラやパワハラを教師に仕向けてくる生徒が増えたのです。同期の女性は、生徒からスカートを捲られたりしているのですが、注意すると『パワハラだ』ですからね。年配の教師などは、ゲーム機を持ってきた女子生徒を注意したところ、別の男子生徒から『セクハラをするな』と暴力をふるわれていました」(本間さん、以下同)

仕事が怖い

 そして本間さん自身、生徒から殴られた経験がある。 「教員をおちょくる男子生徒をクラスメイトの前で叱っていたのですが、みんなに見られていることを気にしてか、ニヤニヤしてぜんぜん話を聞かない。  おい、と怒鳴りると『パワハラですよね』と詰め寄られ、腹部にパンチを受けました。相手は中学3年で私よりも大きく、力が強い。思わずうずくまると、他の生徒たちからはクスクスと笑いが聞こえてきて……。学校に行くのが恐ろしくなりました」  もちろん、「セクハラやパワハラはいけない」というのは“当たり前”の事実である。だが、その言葉だけがひとり歩きしてしまうこともある。  いま、大きな転換期を迎えるなかで「歪み」が生じ、もはや仕事が怖い、と感じている人も少なくない。阪口さんや本間さんのように身をもって歪みを体感している教師もいるが、彼らは声をあげにくいという。一般社会に“適切”な形で受け入れられるまでには、もうしばらくの時間がかかるのかもしれない。<取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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