更新日:2021年05月06日 18:46
仕事

「なんで貯金してないの?」コロナ申請をつぶす役所のおばちゃん/コロナ禍の日本

「10万円なら短期バイトをすればいい」

 相談員の片山さんは「書類が多いから申請は大変よ」「通帳、クレジットカードの明細も見せてもらわなければならないわ」「次回も平日9時から17時の間にお越しいただかなければなりません」と、申請を諦めさせようと必死だったそうだ。  公的機関からお金を借りるのにどうしてこんな嫌な思いをしなければならないのか新川さんは不思議に思いながらも、ヒアリングの結果、貸付対象の条件は満たしていたという。
パンフレット02

新川さんは貸付の条件を満たしていたのに……

 だが片山さんは「なぜ生活防衛資金として、生活費を3カ月分貯めていなかったの」「これは返してもらわなければならないので、お金がないと貸せません」と申請を受付けてくれなかった。 「5月から働き口はあるからお金は返せます。申請だけでもしてください、と何度もお願いしたのに、『債権者に聞いてみないとわかりません』と。債権者って言っても、聞けば区ではなく、東京都の社会福祉協議会のことですよ。まったく別組織みたいに話すのは腹が立ちました。  じゃあ、債権者に聞いてくれっていうと、『電話がパンクしているので、聞けません』と答えられ、思わず笑ってしまいました。そもそも聞く気がないのに、聞いてみないとわかりませんって。それに電話がパンクって、どういう理由なんですかね。たしかに窓口はコロナの影響で忙しそうでした。でもそれは生活に困っている人が、それだけ多いって証拠でしょう。それを電話がパンクって理由で追い返すのは、本末転倒ですよ」  なおも食い下がる新川さんに、しびれを切らした片山さんは「10万円くらいなら、短期バイトすればいい。たくさん短期バイトはあるのだから」と突き放す。 「緊急事態宣言が出されたのに、まだ短期バイトがたくさんあると思っている感覚にも唖然としました。本当にお役所です」

これまで緊急小口資金を借りられた人数は?

 結局、申請を受付けてもらえなかった新川さん。こんな難関を突破できる人間がどれだけいるのか知りたくて、最後に「これまで緊急小口資金を借りられた人はどれくらいいるのですか?」と片山さんに質問してみた。  すると片山さんはコロナの特例を除けば、「私が勤めてからは、一人もおりません」と答えたという――。 「最初から誰も利用できません、と言ってもらえれば無駄な時間を過ごさずに良かったのに……」。いまだ生活費の当てがない新川さんは「社会福祉協議会の支援制度は、職員の食い扶持を守るためだけの見せかけだ」と憤る。 <取材・文/日刊SPA!取材班> ※2020年5月24日記事を再掲載したものです
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