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緊急事態宣言下でも授業や出社が再開。「完全にチキンレース」の現場

どこの部署が最初に出社させるか「完全にチキンレース」

会社「完全にチキンレース状態だった。どこの部署が最初に出社させるか、社内でお互いの出方を見合っているんですから」  こう話すのは、都内のコンサル会社勤務・坂本祥太さん(仮名・30代)。昨年の夏以降、ほぼ全社員がリモートワークへ移行したが、今年に入り、社員を出社させる部署が増え始めているという。 「打ち合わせも会議もリモートで可能ですが、結局会って話したほうがいいね、となる。部署ごとに、こっそり出社している社員がいるのは知っていましたが、今年に入り、ある部署が出社に切り替えました」(坂本さん、以下同)  リモートワークは会社全体の決定であるし、逆らうことは感染リスクを高めることにもつながる。そんなことは許されないはずだと誰もが思っていた。だが、会社のトップはそれを黙認したという。 「全員リモートワークから、全員出社になり、さすがにおかしいと一部の社員が上と掛け合ったそうですが、『ライバル会社はすでに全員出社にしている』と言われてしまったそうです」  感染拡大が続く中でも、同業ライバル社が「出社」していれば「我が社も」となるのは、いかにも日本企業らしい文化というか、日本人らしいというか……。

リモートワークから「出社」体制に戻った理由が曖昧

 関西地方在住の保険代理店勤務・辻本善彦さん(仮名・40代)の会社でも、感染者数が増加の一途を辿っていた最中にリモートワークから出社に切り替わったが、その理由はあまりにお粗末なモノだった。 「出社が再開された理由を誰も知りません。一部の年配社員が、パソコンやメールが使えず、リモートワークができないと上に訴えていたので、それに社長が応じる形だったのでは……と言われています」(辻本さん、以下同)  今年4月頃には、ほぼ全社員が出社。一応、部署のスペースを区切ったり、それっぽい「対策」は行われていたが、5月に入ってから案の定、複数の感染者が出た。 「昨年の春に感染者が出たときは大騒ぎ、会社は閉鎖、全ての部屋が消毒されるなどしていたのに、今回は特に動きもなくて」  いずれも、なんらかのエビデンスによって「登校」や「出社」が再開された、ということではない。さらに、その理由を問うても誰も答えられず、誰が決めたのかさえ曖昧になっているとも言う。  平時なら笑っていられた、そうした「日本らしさ」に流されるまま、世界の流れからいつの間にか逸脱し、漂流している、なんてことにならなければいいのだが……。 <取材・文/森原ドンタコス>
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