金縛りも幽体離脱も医学的に解明されている!

【金縛り・幽体離脱】
起きようとしても体が動かない……!

 目が覚めると体が締め付けられたように苦しく、手も足も動かない。そして胸の上や足元には、見知らぬ人が……。そんな金縛りの経験がある人は意外なほど多く、日本人の約4割にも及ぶという説も。これをオカルト現象と考えている人も多いが、精神生理学を専門とする福田一彦氏によると、「金縛りは100%科学的に解明できる現象」なのだそう。


† 金縛り †

「金縛りは医学用語では『睡眠麻痺』と呼ばれ、脳が覚醒に近い状態で活動しているレム睡眠の最中に起こります。レム睡眠のときは全身に脳から『動くな』という命令が出されていて、体の力が極端に抜けている。特に目が覚めた状態から突然レム睡眠に入るときは、いない人が見えたり変な音が聞こえたりという『入眠時幻覚』を体験することが多く、それが典型的な金縛り体験になるんですよ」

 それでは、一体どのようなときに人は金縛りにかかるのか。

「原因の一つは不規則な睡眠です。夕方くらいに長い仮眠をとって、夜更かしをして明け方に眠ると、金縛りの症状が出やすくなります。だから夜中まで勉強している受験生などは金縛りにかかりやすく、思春期に金縛りを体験する人は多いんです。また、看護師など就業時間が不規則な職業の人も症状が出やすいというデータがあります」

 また、寝るときの姿勢も金縛りと関係があるそう。

「金縛りになりやすいのは、仰向けのときです。日本人は仰向け寝の人が多く、欧米人は圧倒的にうつ伏せ寝が多いんですが、欧米人が金縛りにあったときの姿勢を調べると、仰向け寝の人がほとんどなんです。なぜ仰向けの状態が金縛りになりやすいかというと、仰向けのときは体の筋肉が一番弛緩していて、レム睡眠の状態に入りやすいから。うつ伏せや横向きでは体が動きやすいので、レム睡眠に入りにくいんです」

 その仰向け寝と金縛りの関係を裏付ける例としても挙げられるのが、18世紀に描かれたヨハン・ハインリヒ・フュースリの『夢魔』という絵画だ。

「体が完全に弛緩していている仰向けの状態で、お腹の上に悪魔のようなものが座っているでしょう。これは、金縛りの状態を表したものだと考えられています。『夢魔』という題名は、その悪魔と悪魔が創り出す状態のことを言っている。当時の西洋では金縛りも悪夢も夢遊病も、夜中に変なことが起こると、とにかく全部悪魔のせいにしていたんです」

 金縛りの症状自体は人種や文化に関係なく全世界で確認されているが、この絵画からもわかるように、その捉え方は国や文化によって異なるようだ。

「名前も国によって違い、英語ではウィッチライディング、中国では鬼圧(霊が押すという意味)と呼ばれています。日本人は寝ているときに体が動かず、幻覚が見えると金縛りだと思う人が多いですが、金縛りに該当する言葉がない地域では、悪夢とされる場合が多いです。また、日本でも金縛りという言葉が使われる以前は、座敷わらしなどの妖怪の仕業と考えられていたようです」

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普通の夢(左)と金縛り時(右)の脳波の比較図。
金縛り時は脳が活発で、幻覚や幻聴がおこりやすい


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J.H.フュースリ作「夢魔」。人間に悪夢を見せると
いわれる怪物が女性の上に乗っている


† 幽体離脱 †

また、幽体離脱についても金縛りのメカニズムと同様に、科学的な説明が可能なのだという。

「『体が浮き上がって、下を見たら自分の体が見えた』と言う体験をする人は世界中にいて、その現象はアウト・オブ・ボディ・エクスペリエンス(体外離脱体験)と呼ばれています」

 そのメカニズムはてんかんの手術前の検査の中で解明されたそうだ。

「脳のいろんな場所に電気刺激を与えて、患者が何を感じるかを調べる実験があったんですが、『角回』と呼ばれている部位を刺激すると『自分自身がベッドの上に寝ているのが見えた』『ベッドから2mくらい上に自分が浮いている感じがした』という反応が出たんです。その角回という領域は、損傷すると夢を見られなくなることでも知られています。逆に言うと、夢を見ているときには、そこが使われている。だからその部位を活性化すると体外離脱体験が起こるということは、幽体離脱が夢で、全部脳の中だけで起こっているということなんです」

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福田一彦氏
’58年生まれ。福島大学教授。専門は精神生理学、時間生物学。人の眠りに関わる不思議を研究しており、金縛りについては特に造詣が深い

― オカルト現象の科学【3】 ―




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