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ラブホテル女性オーナーが見た“ワケあり”の人間たち。刑務所から感謝の手紙も

窃盗団に利用され、刑務所から手紙が届く

「知らないうちに窃盗団のアジトにされていたこともありました」  ホテル経営が軌道に乗ってきた頃に起こったのが、窃盗団事件だ。 「車を隠すにはもってこいだったんでしょうね。やたらと人の出入りが多いな、とは思っていたんです。でもまさか、そのグループが窃盗団だとは思いませんでした。ルールは守ってくれていたし、『社長、いつもお世話になっています』って挨拶してくれる人もいたので。ウチから他のホテルにアジトを移した後、そこでバレて逮捕されたそうです」  逮捕されたグループのメンバーから、「あの時はお世話になりました」と手紙も届いたという。 「何にも知らへんかったから、手紙を受け取った時は『やめてくれ!』 って感じでしたけどね(笑)。いつも仲間を呼んで何組も泊まっていってくれていたし、こちらとしては良いお客さんだったんですが……窃盗団だったとは……」  問題を起こすのは裏社会の人間だけではない。痴情のもつれや金銭トラブルなど、中西さんの気苦労は絶えなかった。 「カップルで大喧嘩して、テレビのリモコンを投げつけたらしくて。それでテレビが壊れちゃったので、ローン分割で払ってもらったこともありました。『アンタのとこは二度とけぇへん!』って怒ってはりましたけど(笑)。『お金が無いんです』って人も多かったです。親や親戚に電話してあげて、お金を持ってきてもらっていました」  酔った状態で来店し、財布をすられたとすがりつく女性もいた。その度に警察や親族へ連絡してまわったそうだ。 「お部屋で精神薬を大量に飲んで、薬物中毒みたいになっている子もいましたね……。死なへんかなってドキドキして、生存確認の電話を何回もして。今は困ったお客さんも少ないんですが、昔はとにかく大変でした」

「脛に傷を持つ」スタッフたち

ローズリップス

現在のローズリップス鶴橋店

 客だけに限らず、ともに働くスタッフも癖が強い人間が揃っていた。 「借金取りに追われていたり、旦那のDVから逃げてきたり、病気だったり……あの頃ラブホテルで働いていたのは、事情を抱えた人が多かったですね。当時は社員寮があったので、ワケありで流れてきた人がたくさんいました」  車に荷物を詰め込み、夜逃げ同然で面接にやってきたカップルもいたという。そういったスタッフたちに対し、当初は厳しく社員指導していたという中西さん。  彼女の意識を変えたのは、とあるスタッフからの一言だった。 「私も30代で若かったので、スタッフへの物言いがきつかったんですよね。『葉子ちゃん、私ら脛に傷を持つ人間やから、もうちょっと優しく言って』とお願いされて、そこから人への教え方や接し方を考えるようになりました」 女性オーナー 修羅場を経験した時代から約20年。  アングラ感が漂っていたラブホテルは、女性に人気のラブホテルへと変化を遂げた。今や「人気ラブホテルのオーナー」としてあらゆるメディアに登場している中西さん。  当時を振り返りながら、最後にこう語ってくれた。 「父の倒産があったからこそ色んな人と知り合うことができたし、いろんな出来事も経験できました。考え方や視野が本当に広がりましたね。心に傷を持つ人など、様々な人と出会えたことが人間の肥やしになったと思います」  現在は「女性が喜ぶ、非日常を楽しめるラブホテル」を目指している彼女。男前ならぬ「女前」な中西さんの成長物語は、今後も続いていくだろう。 <取材・文/倉本菜生>
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0
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