仕事

「あいつは反ワクチン」職場にまん延する“ワクチン圧力”に震える人たち

もう騒動に巻き込まれたくない

 ところが、職域接種で使われる予定だったワクチンの数が足りない、ということになると、社内の空気は一変した。幸田さんに「お伺い」という名の圧力をかけてくる人間はゼロになり、今度は他部署を含めて以前のようなワクチン争奪戦が静かに始まったのだ。幸田さんは、そんなやりとりに疲れ果てたという。 「2度目のワクチンを打った社員たちは、もう大丈夫だと海やバーベキューに行ったり、夏を満喫しています。正直、そんな人たちのために自分が打つこともないのでは、と考えてしまいます」  つい先日、ワクチン確保の目処が立ったのか、再び職域接種の案内を受け取った幸田さん。そこにやってきたのは、やはり部長だった。 「またしても“いつ打つの”でしたが、足りない時は自分たちだけで独り占めして、余ればみんな打て、というのはなんかおかしいです。ワクチンを信じていないわけでも、コロナにかかっても大したことはないとも思ってはいません。でも、この騒動には巻き込まれたくないし、ハラスメントをする人なんて最低です」  ワクチンをめぐっては、デマや陰謀論も飛び交っているが、それ以外の“自分なりの理由”で躊躇っている人は少なくない。たとえ、いつかは打とうと考えていても、思いもよらなかった周囲の「圧力」を感じ、余計に接種を後ろ向きに考え始めてしまうこともあるのかもしれない。 <取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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