更新日:2021年10月28日 09:17
仕事

Teams、Slack…チャットツールで「24時間仕事に拘束される」恐怖。現場で生まれた解決策とは

DMは「裏に呼ばれてこっそりの“無茶振り”と同じ」

仕事だらけ それぞれ「つながらない権利」の重要性を意識していたが「一番の解決策」と複数の人たちが声を揃えたのは、「ダイレクトメッセージの完全禁止」という手法であった。  都内の保険代理店勤務・中嶋大介さん(仮名・30代)が語気を強める。 「テレワークになって、通勤時間がなくなり、業務外の面倒なコミュニケーションが減ったのは確かですが、四六時中チャットを見ていなければならず、皆が疲弊していました。そんな時、上司が打ち出したのが、ダイレクトメッセージの禁止です」(中嶋さん、以下同)  チャットツールの機能として、特定のユーザーとだけやり取りができる「ダイレクトメッセージ(DM)」がある。これを禁止することで、社内のあらゆる問題が解決したというのだ。 「会社に通勤していたときもそうですが、上司からの“無茶振り”みたいな仕事の類は、皆の前では指示されず、裏に呼ばれてこっそりという感じでした。これが、チャットツールではDMなんですよ。DMだと、みんなの前では言いにくいことが言えるし、結果的にしなくていい仕事まで押し付けられるという問題が出てくる。DMの禁止で、まずこれがなくなりました」  DM禁止令が出される以前は、上司から「相談」という形のDMが、休みだろうが深夜だろうがバンバン届き、すぐに対応しないと「上司の心証を悪くする」と渋々応じた結果、自身の担当外の仕事、時には上司の「雑用」まで行わなければならなかった。時にはチャットツールの使い方がわからないと、ビデオ会議の機能で何時間もレクチャーする羽目になることも。それがなくなり、格段にストレスも減ったのだと話す。 「DMと併せて、社員間の“直電”も減らすべきとなりました。DM禁止にしても電話を使われると結局同じということです。ただ、どうしてもという場合は、どんな用件でDMした、電話した、と全体チャットや部署チャットで報告する義務も設けられました」

仕事を口実にプライベートまで侵食してくる人たち

 DM禁止のメリットはそれだけではない。チャットツールを使うことで、仕事を口実に「セクハラ」をしてくる上司や社員が激減したと話すのは、大阪市内の不動産会社勤務・森口加奈子さん(仮名・30代)。 「話したこともないような別部署の人から、気持ち悪いメッセが届くようになり気が滅入っていました。チャットによって社員間の距離が縮まったことを逆手にとって、コロナが終わったらご飯に行こうとか言われるんです。一応上司だし、こちらとしては逆らえません。セクハラとパワハラがDMで横行していて、同僚の女性社員も悩んでいました」(森口さん、以下同)  森口さんの会社でもDM禁止令が出て以降は、こうした悩みが完全に無くなった。プライベートに侵食してくるセクハラやパワハラまがいのDMを送った上司が、全体チャットで吊し上げられることもあったという。 「決まりは決まりですから、破った人はものすごく白い目で見られるんです。管理職からは、DM禁止に反発の声しか上がっていませんでしたけど、部下にとってみれば、こんなにありがたいことはない」
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部下の愚痴や悪口が減った
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。

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