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「馬だけではなく騎手も育てる」BCトレーナー矢作調教師の凄さに迫る

矢作調教師の凄み2 騎手を育てながら勝っているのが凄い!

「ルメールしか勝たん!」とは昨今、競馬ファンの間で良く聞かれる声。実際、原稿執筆段階で170勝とリーディングを快走し、G1レースには15戦騎乗して4勝2着6回と大活躍中です。  近年の中央競馬は、ルメール騎手を筆頭に、一部のトップジョッキーに勝ち星が集中する傾向が強まっています。勝負の世界ですから、力のある者がより成績を伸ばすのは当然。ただ、その一方で、若手が十分なチャンスを与えられないまま、鞭を置くケースも散見します。  騎手起用にも矢作調教師の凄みが表れています。厩舎所属の坂井瑠星騎手を主戦に据え(98戦に騎乗)、同じく厩舎所属で今年デビューしたばかりの古川奈穂騎手でも5勝。 矢作厩舎 騎手別成績 順位 騎手  着別度数 1  坂井瑠星 11-8-12-67/98 2  川田将雅 5-4-2-5/16 3  古川奈穂 5-3-1-33/42 4  吉田隼人 3-3-3-14/23 5  藤岡佑介 3-1-2-11/17 6  岩田望来 2-2-0-6/10 7  松山弘平 2-0-0-12/14 8  藤岡康太 1-2-1-8/12 9  菱田裕二 1-2-1-6/10 10  川又賢治 1-1-1-14/17 集計期間:2021.1.5~2021.11.7 2021年 騎手成績 順位 騎手  着別度数 1  ルメール 170-116-66-332/684 2  川田将雅 127-58-54-210/449 3  福永祐一 117-86-87-358/648 4  松山弘平 112-89-66-477/744 5  横山武史 87-84-57-452/680 6  吉田隼人 79-85-65-466/695 7  岩田望来 76-96-91-503/766 8  戸崎圭太 73-58-68-360/559 9  幸 英明 71-65-67-553/756 10  M.デムーロ 68-55-56-277/456 集計期間:2021.1.5~2021.11.7  新人騎手を乗せるためには、オーナーの理解が不可欠で、その煩わしさから弟子を預からない調教師もいると聞きます。これだけ若手にチャンスを与えられるのは、矢作調教師がオーナーとしっかり折衝し、結果も出しているからに他なりません。ちなみに、ルメール騎手の起用は1回だけでした。  ブリーダーズカップ制覇の前日に行われた京王杯2歳Sでは、矢作厩舎のキングエルメスに坂井騎手が騎乗して優勝。  ブリーダーズカップ後のインタビューで矢作調教師は「日本で弟子が重賞を勝って、勢いをつけてくれました」と語り、それを受けて坂井騎手は「少しでも力になれたのならよかった」と答えたとか。こんな美しい師弟愛が、ここには確かに存在しているのです。

矢作調教師の凄み3 たくさん走らせるのが凄い!

2021年 調教師成績 順位 調教師   着別度数 1  (栗)中内田充 46-25-29-147/247 2  (栗)矢作芳人 44-40-35-299/418 3  (美)手塚貴久 42-34-30-200/306 4  (美)国 枝栄 42-33-30-164/269 5  (栗)安田隆行 39-49-25-200/313 6  (栗)友道康夫 39-35-24-142/240 7  (栗)清水久詞 36-41-36-279/392 8  (栗)斉藤崇史 34-22-21-148/225 9  (栗)須貝尚介 33-26-36-172/267 10 (栗)武幸四郎 33-20-20-168/241 集計期間:2021.1.5~2021.11.7  2021年11月9日時点で、矢作厩舎のJRAでの出走回数は418回。これは全調教師でトップの数字です。2位の清水久詞調教師こそ392回と拮抗していますが、続く杉山晴紀調教師が329回で、300回を超えているのは8人しかいません。  矢作調教師は著書の中で、「勝率へのこだわりは自己満足に過ぎない」と言い切っています。競馬は出走するだけでも手当てが貰えるので、たくさん走ることがそのままオーナーの利益に繋がるからです。  とはいえ、たくさん走った結果、馬が故障してしまっては意味がありません。出走回数の多さは、それだけ馬の体調管理ができている証拠です。また、馬房数には限りがあるので、たくさん走るためには、効率よく馬を入れ替えていく必要があります。  常に、厩舎の外にいる管理馬の状態にも目を光らせて、最適なレースに合わせて馬を入れ替える。複雑なパズルのようなミッションを涼しい顔で遂行する、これもまた矢作調教師の凄みです。
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情に篤い人物像
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