スポーツ

「ハイペースは差し有利、スローペースは先行有利」は本当か?競馬の格言を検証

データを検証してみると……

 では、実際にデータで確認してみましょう。サンプルは力勝負になりやすい東京競馬場の芝1600m戦の良馬場に限定しました。全馬が力を発揮できる条件なため、展開による有利不利も出やすいと考えられます。  2018年から2021年11月14日までに行われたレースの内、前半3ハロンが35.0秒以上になったレースを元に検証していきます。結果は下記の通り。 逃げ馬 13% 先行馬 44% 差し馬 31% 追込馬 12% *数値は占有率  上記に対し、同コースかつ同期間で行われたレースの内、前半3ハロンが34.5秒以下になったレースの成績が下記になります。 逃げ馬 8% 先行馬 28% 差し馬 50% 追込馬 14% ※数値は占有率  先行、差しという戦法はそこまで展開に左右されません。それに引き換え逃げや追込は極端な競馬となるため展開による影響の大きな先方と言えるでしょう。よってここでは逃げと追込に照準を合わせて格言と照らし合わせてみます。  では改めて、前半3ハロンが35.0秒以上になったレースは逃げ馬の占有率が13%もあったのに対し、前半3ハロンが34.5秒以下になったレースは同8%。逆に追込馬は12%から14%に上がっています。「ハイペースは差し有利、スローペースは先行有利」の信憑性が限りなく高まってきました。

格言が覆される条件はあるのか?

 一方、格言が崩れたレースとなったケースも見られ、例えば上がり3ハロン37.4秒を要した天皇賞(春)は上位に好走した3頭が4コーナーでは5番手以内を追走。ハイペースであったにも関わらず差し馬が伸びてくることはありませんでした。  また、上がり3ハロンが33秒台を記録していた日本ダービーでは差し馬のシャフリヤールが1着。2~3着も後方から進めており、後に菊花賞を制するタイトルホルダーは4コーナー4番手から6着に敗れました。  他にも天皇賞(秋)の1着エフフォーリア、2着コントレイルは差し馬。こちらもスローペースで流れた一戦でしたが差し届いています。  このような格言と逆になるケースは往々にして上級条件で起こります。スローペースを差そうと思うと他の馬よりも速い上がりで走る必要があります。  逆にハイペースを前で粘ろうと思うと他馬よりもバテずに粘りこむ必要があります。これは能力が高くないとできません。という事は、言い換えると能力のある馬なら格言を覆せると考えられます。  先ほどと同コース、同条件をオープン特別以上に限定。まず、前半3ハロンが35.0秒以上になったレースがこちら。 逃げ馬 0% 先行馬 40% 差し馬 35% 追込馬 25% ※数値は占有率  そして、前半3ハロンが34.5秒以下になったレースが下記になります。 逃げ馬 8% 先行馬 27% 差し馬 46% 追込馬 19% ※数値は占有率  スローペース時の逃げ馬の占有率は0%だったのがハイペースになると8%に上昇。逆にスローペース時に25%だった差し馬の占有率はハイペース時には19%に下がっています。  クラス問わず分析した際は格言通りだった傾向も、オープン特別以上に限定すると格言とは真逆の傾向になりました。
次のページ
下級条件と上級条件では異なる
1
2
3
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。
Twitter:@RyotaYasui

安井式上がりXハロン攻略法安井式上がりXハロン攻略法

(秀和システム)


記事一覧へ
勝SPA!
おすすめ記事