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江頭2:50、テレビでは「炎上上等」もYouTubeでは“普通の内容”で人気

エガちゃんと「ブッシュマン」がダブる

 この「初めてシリーズ」の動画を見て、私は’80年代の大ヒットコメディー映画『ブッシュマン』(※)を思い出した。文明と隔絶したアフリカのカラハリ砂漠に暮らす民族ブッシュマン。彼らがひょんなことから文明に触れる姿を通して、視聴者は自らが住む文明社会を客観視することができた。そして世俗にまみれていないブッシュマンの言葉を、裏表がないものと信じられた。その自然な率直さがコメディーとなっていた。
 エガちゃんに対する世間の評価もブッシュマンに対するものと同様だと思う。エガちゃんの言葉に嘘がないと信じられるから、率直さが痛快に感じられる。そもそも55歳(当時)のエガちゃんが、今までマクドナルドの商品を食べたことがないなんてすごい。本当にブッシュマンさながらだ。そしてそう言われて「エガちゃんならありえる」と感じさせるところが、またすごい。

「聖(セイント)おじさん」となったエガちゃん

 スマホを持って以来、私たちは、さらなるコマーシャルと口コミの洪水の中で、生活している。そうした日常では「自分の味覚の好みも他人に決められているのではないか」そんな馬鹿げた脅迫観念すら持ちかねない。現在社会の中では、エガちゃんのような存在は貴重なモノサシである。  迷惑YouTuberによる「スーパーマーケットの売り物の鮮魚を支払いの前に食べてしまう」などというなんだかわけのわからない蛮行と、エガちゃんが築いてきた伝説は全く別物だ。そうした過激な「修行」を積み重ねることによってエガちゃんはついに「聖(セイント)おじさん」となった。自らの動画チャンネルでは、無理矢理蛮行などせずとも、聖人では持ち得ない天真爛漫さを発揮すればいいだけなのだ。 ※正式タイトルは『ミラクル・ワールド ブッシュマン』。現在は『コイサンマン』に改題されている
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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