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親ガチャ・子ガチャの言葉に葛藤する夫婦も「子どもをつくるのが怖い…」

「子どもを作るのが怖い」

双葉を持つ親子の手元 一方、逆に裕福であっても「子どもを作るのが怖いと感じるようになった」と話すのは、都内在住のIT関連会社経営・杉本耕助さん(仮名・40代)だ。 「親ガチャの対義語っていうんですか、子ガチャって言葉があるでしょう? 衝撃を受けました。確かに身の回りにはいくら裕福でも、子どもの成績が上がらなかったり、スポーツができなかったりで悩んでいたり、それがきっかけで夫婦不和になった知り合いが少なくなかった。そういうのを見ると、失敗できないなって」(杉本さん、以下同)  杉本さんは前出の古藤さんとは対照的な人生を送ってきた。実家は横浜市郊外にある老舗工務店。祖父が社長で父が専務を務め、地元の小学校を卒業後、都内の私立中高一貫校に進学。高校の指定校推薦で有名私大に進学し、実家の工務店の役員として働きつつ、親の知人の出資を得て現在の会社を起業した。まさに順風満帆、「何不自由なく過ごしてきた」と自負している。 「だからこそ、正直、子どもは迷っていますね。経済が低迷し、社会も不安だらけで、今は自分のことで精一杯なんです。30代後半の妻は急いでいるようですが。子ガチャという言葉はひどいと思いますけど、事実、生まれてくる子どもは選べないので……」

親子を分断するのはあまりにも悲しい

 家族を“運任せ”なゲームの課金と重ね合わせた言葉に対して、「親をなんだと思っているのか」「子どもをなんだと思っているのか」と違和感を覚える人も少なくないはずだ。  SNSでトレンドワードを観察してきたが、昨年、親ガチャという言葉が注目を集めて新語大賞にも選ばれた。そのため、最近では家族間でうまくいかないことがあると軽率に使う風潮がある。  ただ、自分が“親ガチャに失敗した”と思っているならば、親からすれば“子ガチャに失敗した”と思うかもしれないし、自分が“子ガチャに失敗した”と思っているならば、子どもからすれば“親ガチャに失敗した”と思うかもしれない。  お互いにそう思って、親子が分断されてしまうなら、あまりにも悲しい。綺麗事かもしれないが、“それぞれの人生”とわかったうえで、お互いを認め合うほかない。 <取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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