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『少女革命ウテナ』幾原監督が語る“大ショックだった”経験「コマーシャルのようだと言われ…」

「入社当時は使えなかったし、空気も読まなかった(笑)」

――我々からすると、監督はまさしくカンブリア的な感性の中にずっと身を置かれているように思うのですが、そんな監督でも会社員時代に自分自身のエッジが取れていたんだと気付いた瞬間があったと聞きました。 アニメ 監督・幾原邦彦氏 会社はルーチンにはまらないといけませんからね……。入社当時はとがってましたよ。でも、使えなかったし、空気読めなかったので、それではまずいと何年かかけて便利な人になりました(笑)。でも、ある時、『少女革命ウテナ』のプレゼンテーションをしたら「これはコンテンツではなくコマーシャルのようだ」と言われて。大ショックでした。確かに、今思えば「ここにウケますよ」というアピールしか企画書に描いてなかったんですよね。  大事なのは何が作りたいか。そこからはもう作りたいものを作るために、騙しちゃいけない人をだまして怒らせてきましたね(笑)。オススメはしません。でも、当時から今では業界もだいぶ変わってきましたね。

自分たちの存在証明をどうやって見つけていくのか

――どのように変わったのでしょうか?  まず、90年代と00年代では全く違います。端的に言えば、00年代のデジタル以降、誰でも作れるようになりましたから。10社もないような状態だったのが、スタジオが尋常じゃない数できた。昔は、セルを衣装ケースに入れて運ぶのもアシスタントの仕事だったので、とにかく体力仕事だったこともあり、男性しかいませんでした。今は女性も多いですし、技術革新でアニメ業界もかなり変わりましたね。 ――では、最後に後編が公開中ですが、劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』の見どころを教えて下さい。  兄弟が何を見つけるのか、存在証明をどうやって見つけていくのかを見届けて欲しいです。
『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる』

双子の冠葉と晶馬が妹陽毬の命を救うために謎の「ピングドラム」を探す物語。’11年放映のテレビシリーズ全24話を再構築し、新作パートを追加した劇場公開版の劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる』が公開中 ©2021 イクニチャウダー/ピングローブユニオン

【幾原邦彦プロフィール】 ‘64年、徳島県生まれ。アニメ監督。’86年に東映動画入社。’96年にクリエイター集団「ビーパパス」を設立。翌年に監督作『少女革命ウテナ』を発表。代表作に『輪るピングドラム』『ユリ熊嵐』『さらざんまい』などがある 取材・文/もちづき千代子 撮影/尾藤能暢
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