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「4630万円誤振込」の田口翔被告がSNSを開設。“有名になった素人”が稼げる時代の明暗

ユーチューバーヒカルが目指す「win win」な関係

 この「持っている男」をユーチューバーのヒカルがスカウトした。ヒカルが経営する会社に田口翔は就職するという。ヒカルは「win winの関係」を強調する。今後YouTubeで田口翔の動画が公開されれば、大変な数の再生回数を記録するのは必至だ。それはそのまま収益の数字となる。凄い時代だ。  立花孝志はマツコデラックスに執拗に絡んだことで、動画の再生回数を稼ぎ、大変な収益を得たと言う。それはあらかじめ調査して、再生回数を稼げる人物としてマツコデラックスをターゲットにして話題を作ったと言う。  逆に太田光を調査したところ、再生回数が見込めないことがわかり、彼をターゲットから外したらしい。そのことを太田光は非常に悔しがっていたとか(笑)。「マツコさん、稼がしていただいてありがとうございました」と、イケシャーシャーと、立花孝志はYouTube動画で語っていた。  かつて自然主義文学の私小説が一世を風靡した時、最終的に、小説のネタのためにスキャンダラスな生き方をする本末転倒な作家が現れることによって、自然主義文学のムーブメントは衰退していったという。  ユーチューバーのしている事はそれに似ているのかもしれない。しかし、最終的に文学作品を作る必要はなく、ただ再生回数を稼げば良いのだから本末転倒だろうがなんだろうが、ユーチューバーの方法論が廃れていく事はないだろう。なんにしても、私生活は金になるということらしい。

田口翔は犯罪者だが憎み切れない

 ところでもし私の銀行口座に大金が誤送金された時、私はどうするだろうか? 田口翔と同じことをしないことを、私は断言できない。また静かに暮らしていた人間が、誤送金によって人生を翻弄されたことに同情も集まった。田口翔は罪は犯したものの、憎み切れない理由を持っていて、お騒がせ系YouTubeタレントとして、格好の素材なのかもしれない。  今後、こうした“インスタント有名人”をスカウトする流れが続くことだろう。それに対する違和感はなくもないけれど、それを否定する理由も全く見出せない。個人が巨大な発信力を持つ現代社会は、かつて経験したことがないほど変な社会となった。  アンディ・ウォーホルが「未来には、誰でも15分間は世界的な有名人になれるだろう」と言ったのは50年以上前だ。現在はその15分間を、瞬く間にお金に変換することができる仕組みが出来上がっている。やっぱり変な社会である。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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