サウナブームは年齢や性別の壁を越え、若い女性層にも浸透。不可逆的な広がりを見せている
サウナブームに新たな熱波が広がっている。サウナのラグジュアリー路線だ。
その代表的な事例が、東京・恵比寿の喧騒から離れた住宅街の一角にある「The CLASS」だろう。マグマスパ式サウナが醸す熱伝導は心地よく、身体の深部から温まる。完全予約制のプライベートサウナで、入会金20万円、年会費は100万円と超高額ながら、すでに予約が取りづらい人気店となっている。
同施設のアンバサダーを務めるのは、サウナの鉄人氏。サウナ歴35年のプロサウナーで、恵比寿の「THE CLASS」の他、麻布十番の「LOCA」といった高級サウナを続々プロデュース。サウナのラグジュアリー化という新たなムーブメントの一翼を担うキーパーソンだ。
サウナの鉄人氏。数々のサウナ施設やイベントをプロデュースする仕掛け人。自身も週5で汗を流すヘビーユーザーだ
サウナ業界の進化について、鉄人氏が語る。
「高級サウナ路線にニーズを見出した契機は、コロナでした。外出規制で飲み会やゴルフに行けなくなった経営者仲間にサウナの作法を教え始めたら、反響がすごかったんです。ちょうど第3次サウナブームと重なったのも大きくて。みるみるうちに100人を超えるサウナコミュニティーができあがった。その後、恵比寿にあるサウナ施設THE CLASS.にアンバサダーとして招かれたのを発端に、系列として麻布十番のLOCAをサウナー目線からプロデュースしました」
「ほんの1~2分で滝のように汗が噴き出す」
LOCAではビジターとしての入浴も可能だが、前述したように入会金と年会費の合計は120万円。その内観はさながら三ツ星ホテルのようで、言わずもがな、サウナの内容もこだわりぬかれている。
内装、サウナ、水風呂、休憩椅子と考えつくされたLOCA。麻布十番にあり、早くも予約困難になりつつある
「富士山の溶岩プレートを使ったマグマスパ式サウナという手法を用いており、マグマを水蒸気で温める特殊技術は世界3か国で特許を取得しています。通常のサウナ施設では、90~100度の高温で発汗を促しますが、マグマスパ式サウナでは温度自体は65度ほど。その代わりに湿度を約60%、輻射熱約60度にすることで、人がもっとも自然に発汗しやすい状況を作り出しています。
普通のサウナでは発汗まで5~6分かかるのが、ほんの1~2分で滝のように汗が噴き出します。また、ロウリュも高温だと暑すぎて痛いという現象が起こりがちですが、マグマストーンなら体感温度だけを上げることができます。もちろん水風呂にもこだわっており、冷却装置で常に15度を維持。富士山の溶岩石やトルマリングなどの鉱石などをろ過させることで、富士山の湧水のような水質で水風呂を楽しめます」
高額な入会金にもかかわらず入会希望者は後を絶たず、現在予約は1か月待ちの状態。高級サウナ市場の盛り上がりは、今や絶頂に達している。
そんなサウナの鉄人氏が打ち出した次なる一手は、10月1日に富士山の麓・河口湖にあるグランピング場を貸し切って開催されるオールナイトサウナフェス「GLAMSA(グランサ)」だ。
「大自然の中でグランピングをしながら、サウナでととのい、極上の最先端サウンドを堪能できる史上初のオールナイトサウナフェスを開催します。サウナゾーンでは、40人も収容できる国内最大級のテントサウナ『CUBE16MAX』やバレルサウナ、フィンランド式本格サウナ、貸切サウナカーなどを取りそろえ、著名な熱波師も招聘予定。水風呂には富士山の湧水を使った天然の大型プールを設置します。
また、他のイベントと一線を画すのは、やはり豪華DJ陣による音楽の要素でしょう。テキーラガール、シャンパンガールなどもいて、クラブっぽさを演出しています。その他にも、BBQやサ飯屋台、シーシャなどもあり、一級の大規模複合型イベントとなっています」
10月1日に開催されるサウナ×音楽の野外フェス「GLAMASA」。富士山の麓で圧倒的なととのいを得られそうだ
「周囲の意見を取り入れていった結果、どんどんパリピっぽくなっていきました(笑)」
と若干の戸惑いも見せるサウナの鉄人氏だが、爆発的なニーズもあった。現在、600人ほどの参加者を募る予定で、100万円の「VVIP」チケットも売れ始めているという。
盛況を見せる高級サウナ市場は、まさに「狂乱」の様相を呈している。このような状況を鑑み、サウナの鉄人氏にサウナ業界の未来について語ってもらった。
「サウナ業界は今後、それぞれのニーズに合わせて多様化していくと考えています。今のラグジュアリー路線は、これまで普通のサウナ施設に行きずらかった芸能人や経営者のニーズを満たしたというのが現状です。しかし、これからはいわゆる富裕層だけでなく、普通の人でも『ちょっとした贅沢』として高級サウナが選択肢の一つとなっていく。
また、本来サウナはコミュニケーションの場だったと私は考えています。通常のサウナ施設ではコロナの影響で黙浴があたりまえみたいな風潮がありますが、フィンランドやロシアといったサウナの本場では、『サウナ外交』といってサウナでビジネスの相談をすることもある。プライベートなサウナ空間も、今後もっと手軽なものとして普及していくのではないでしょうか」
サウナは娯楽の一つとなり得るか。
取材・文/桜井カズキ 浜田盛太郎