エンタメ

アダルトメディア研究家が語る、AV誕生40年目で「マニアジャンルが消える」理由とは?

「そもそもAVは儲かる商売ではなくなっている」

――安田さん的にはAV新法にはどういった見解をお持ちなんでしょうか。 安田 もう少し“現場の声”が反映されてもよかったと思うんですが、仕方ない部分もある。新法によって、発売されるのが撮影の半年先、売上が入るのはさらにその先になるので、小さいメーカーほど運転資金のやり繰りが大変になる。意外と潰れずに持ち堪えていますが、事業規模を縮小させるところは多い。例えば規模の小さいマニアメーカーなどは、経営が難しくなり倒産する可能性もある。そうすると、マニアジャンルがひとつ消えるかもしれない。ただ、マニアは“地下に潜る”という形を遂げるかもしれない。 ――地下とは? 安田 簡単にいえば、自主制作の“同人AV”です。最近はFC2や同様の個人動画売買サイトで売る人が増えています。初期のAVって、「日本ビデオ倫理協会」という審査団体を通したものしか流通は難しかったんですよ。しかし、90年代に入り“自主規制”で販売するメーカーも増えた。いわゆる“セルビデオ”というものですね。セルビデオはモザイクの限界や、過激さを売りにしていた。でも、いまはセルビデオが支流ですよね。この流れのように“地下”がなるかもしれない。ただ、そんな同人AVをAVの括りにするのか、と言われたら微妙ですけどね。 ――マニアは地下で存続する……と 安田 法律に従った適正AVというカテゴリで語ると、やはり縮小傾向ですよ。1本当たりの予算もギャラも大幅に減っています。もちろん、映像制作の技術が進化して製作費削減につながっている面もありますが、そもそも儲かる商売ではなくなっているのかなと。 ――そんなAV業界で現在働いている制作スタッフの方々の意識も、ひと昔前とは様変わりしているようですね。 安田 昔は成り行きみたいな感じで、なんとなく業界入りするスタッフが多かったんですが、今はちゃんとAV業界を志望してくる人が増えてきている。有名大卒も多い。昔はやっぱりダメな人の吹き溜まりみたいなところもありましたけど、現代はみんなAVを観て育った世代だし、ちゃんとしている人が多いですよ。 ――“ちゃんとしている”って具体的にはどういう点ですか。 安田 ちゃんと約束の場所に時間通り来る(笑)。昔は遅刻するし、そもそも来てくれただけでありがたいみたいなところがあって、昔はおもしろいことをやるってことが先に立つ人も多かったんですけど。そういう人の居場所はない時代で、みんな売上とか数字を強く意識しています。 (前半・了)  法整備により健全化していくAV業界、そのなかで進化を遂げる作品群という事実。3月17日公開の後編では、女性が男性向けのAVを見ているという衝撃の事実や、AVが“AIにその場を奪われる!?”という未来についても語る! 取材・文・撮影/伊藤綾
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
1
2
日本AV全史 (ケンエレブックス)

アダルトビデオは終わったのか?

おすすめ記事
ハッシュタグ