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アダルトメディア研究家が語る、AV誕生40年目で「マニアジャンルが消える」理由とは?

 アダルトビデオ(以下、AV)が誕生して、40年以上の月日が流れている。VHSやβからはじまった再生メディアは、DVD、Blu-ray、VR、Streamingに進化。その裏では、大勢のトップ女優に、歴史に残る名作、そして“事件”も数えしれない。そんなAVの歴史を振り返る一冊を、アダルトメディア研究家の安田理央氏が上梓した。その名も『日本AV全史』(KENELE BOOKS)。昨年施行された「AV新法」で業界がバタつき、AVは存続の危機にあるとも言われる。AVの未来はどうなるのか、安田氏に話を聞いた。

縦と横の軸で理解するAVの歴史教科書

――1981年の誕生から40年余りとなるAVの歴史を、全440頁という頁数にまとめています。メディアの変遷やジャンルの盛衰、規制や社会状況といった視点からたどり、極めつけは35頁にわたる“AV年表”。まさにAVの歴史教科書のような書籍でした。 安田理央(以下、安田) 読者によっては、「このAV女優が載ってない」「この名作が載ってない!」と思うかもしれません。本書はそういう“偏り”はなくし、AV業界全体の流れ、事件やブームなどを俯瞰するかたちで、読んでいただければ。業界の人だけが知る裏話みたいな話や、個人的な見解や論評じみたものは最小限にしています。掲載女優さんに関しては当時のAV女優人気ランキングを参考にしながら、極力、巻末の年表で網羅するようにしていて、男優や監督のデビューなどもひと通り抑えたつもりです。 ――安田氏は過去作でも、壮大な“年表”が話題になっています。 安田 2016年発表した『痴女の誕生』(太田出版)でも、年表だけで20頁以上を割きました。本を出すごとに年表のボリュームが増えています。今回も35頁。年表つくると後々、自分が原稿を書くときに役に立つんですよ。ゆくゆくはアダルト関係の年表だけの本もつくりたいです(笑)。 ――2019年に『日本エロ本全史』(太田出版)を出版され、構想としては「AVの歴史」というテーマもずっとあったのかと思いますが、執筆に至ったきっかけは? 安田 そもそも AVに関する書籍は多いのですが、俯瞰的に歴史的にまとめる書き手が意外にいない。先輩ライターの藤木TDCさんが新書で1冊出したぐらいで、あとはムックとか。基本的にはAVが一番熱かった90年代ぐらいまでの話が多い。自分は1994年からアダルト中心のライターをしていて、AVの歴史を共に生きている。もちろん、わからない部分はあるので、資料をしっかり集めて、タイミング的にも2021年までの歴史を40年史としてまとめたいなと。

集めたAV情報誌はデタラメの場合もある

装丁にも強いこだわりを感じる一冊。内部にもパラパラ漫画があるなど豪華仕様

安田 ただ、2022年にAV新法が施行されて加筆したので、執筆期間としては約2年かかってしまいました。41年史です。参考資料は国会図書館にもエロ本みたいな雑誌は基本的にないので、買うしかない。とくにここ10年は、AV情報誌がほとんど廃刊・休刊が多く、かなり慎重に調べました。古い資料が見たいときは、ネットオークションを使いましたが……古いエロ本やAV情報誌は“数万円”することもある。正直言って、この1冊の印税でも赤字ですね(苦笑)。 ――AVというアダルトメディアならではの難しさですね。 安田 しかも、せっかく入手したAV情報誌も、誌面に書いてあることが本当かどうかはわからない。なぜなら、昔のAV業界はブラックボックス的に“暗黙の了解”部分があった。例えばAV女優や監督が、インタビューで過去や事実を語れない“事情”を持っていることが多い。また、エロ業界はいい加減というか、村西とおるさんとか象徴的ですけど、インタビュイー本人が話を盛っていることも多くて(笑)。なので、どちらかというと僕の本はいつも「どう報道されてきたか、その時代や社会の空気を知る」という視点なんですよね。 ――日本に並ぶ“AV大国”といえばアメリカですが、日本との違いはどこにありますか? 安田 やはり一番はモザイクの有無と思います。エロ本もそうですが、日本のAVは法的な規制をうまく利用しながら、良くも悪くもガラパゴス的な進化を遂げてきた。今回の執筆作業での気づきや発見みたいなことをあえて言うなら、やっぱり黎明期のAVはつまんねえな、と(笑)。ほとんどの作品が、完成度が低くて。 ――言い方は悪いですが法的な規制をかいくぐりながら、それだけの発展をしてきたんですね。 安田 AV業界は幾度となく“法整備”の危機を乗り越えた歴史がある。2022年に施行されたAV新法も、みんな文句を言いつつ適応してきているように思います。アメリカも出演者たちの権利に非常に煩いので、制作環境も日本もアメリカとそう変わらなくなっていくと思います。日本でも台本なども事前に出演者に伝える必要があり、ナンパやドキュメント的なものは消滅している。このような時代や法律に沿った“ジャンルの消滅”は今後もあると思います。
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そもそもAVは儲かる商売ではなくなっている
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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アダルトビデオは終わったのか?

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