AIが自分好みのオカズを用意してくれる未来
――安田さんはアダルトカルチャーの「今と未来」といったテーマで「週刊プレイボーイ」(集英社)で連載もしていますね。
安田 私の書き手としての強みは過去のことと、現在のことの両方を書けることだと自分では思っていて。やはり歴史的な流れの中で、現在進行形で起きているムーブメントも意識的に伝えていきたいとは思っています。
――未来のAV的なトピックスについても、ぜひうかがえればなと。
安田 おそらく実写と区別つかないレベルのCGで、AIが自分好みのオカズを用意してくれるようになっていくでしょうし、そうなるとAVとしてのコンテンツ製作はなくなりますよね。最初の段階ではモデルになる女優さんが必要かもしれないけど、やがてそれも不要になるでしょうし。「おっぱい、もう少し大きい方がいいな」みたいな感じでカスタマイズも自由できるようになるという。
――視点はいろいろですが近い将来、AVは消えるといった話は業界の有識者でも多いですよね。
安田 ただ、ここ20年ぐらいの純粋な自慰ツールに特化してきたAVは、AIに取って代わられるかもしれませんが、ドラマ的な作品はまだまだ残るのかなと思います。どちらかというとロマンポルノに回帰するようなイメージで、疑似セックスでもしっかりエロいコンテンツが活性化する可能性もありますね。
――アダルト分野でのAI活用って、スパンとしてはどれくらいのイメージをお持ちですか。すでにAIグラドルの写真集がAmazonで売られているような状況もありますが。
安田 そう遠い将来じゃない気がします。下手すると5~6年とか。イラストの世界だとかなり進んでいるし、たぶんコストを考えなかったらもうすでにできるんじゃないかなと。
安田 この調子だとAIがクリエイティブなことをやって、人間がAIの成果物の修正とか、雑用みたいなことをやることになりそうですね。つい最近までAIが雑用とかしてくれて、人間はもっとクリエイティブなことができるって話だったのに、結局つまらない仕事だけ残っていくという。なので、ドラマっぽい作品は残ると言いましたけど、人間の仕事は残らないかもしれません(笑)。
――こんなこと聞くのも失礼な話ですが、安田さんは約40年AVを観てきて、制作の現場にも携わってこられたなか、まだまだAVでヌケそうでしょうか。一応、今後についてというところで……(笑)。
安田 いや、それで言うと全然ダメですよ(笑)。もう性欲ないから。2〜3年前から50歳を超えて徐々にね。正直に言うと、AVレビューとか本当はやっちゃいけないんだろうな俺。もちろん観れば良い/悪いとかはあるけど、そこに湧き上がるような興奮があるかというと、ちょっとやっぱり……。レビューの書き手としては、読者に誠実ではないかもしれないと思うときもあります(笑)。
――ある意味、本書も集大成的な1冊になったと思うんですが、次の本のテーマなどは考えていますか?
安田 本当にこの後どうしようみたいな感じですけど、僕は90年代のエロがやっぱり好きなので、とりあえず「90年代×エロ」みたいなテーマで1冊考えていますね。
――安田さんにとってアダルトメディア研究の醍醐味って何でしょうか。
安田 ユーザーのニーズに敏感で変化もダイナミックだし、あと、なんかバカバカしいというか、こんなこと真面目にやっているおかしさみたいな感覚はけっこうありますよ。誰もまだまとめていないものをまとめて、世の中にない本を書きたいという気持ちが執筆活動の柱にもなっているし、後々の資料になるような本をつくっていけたらなと。……性欲はないんですけど。
アダルトメディア研究家ならではの苦悩を抱えながら。安田氏は今日も執筆活動に勤しむのだ。
取材・文・撮影/伊藤綾
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):
@tsuitachiii