私が「何かあったんですか？」とたずねると、まるで“聞いてほしかった”とばかりにAさんは語り始めました。 「数年前から旦那が仕事をサボるようになり、毎日のように家のお金を持ち出して飲みに行くようになったんです。私もこのお店を辞めて昼間の仕事に移って働いているんですが、そのお金も旦那に飲み代として使われてしまって……」 　それを聞きながら、まさにドラマにあるシーンを体験している感覚でした。さらに、その後の話に驚きました。 「旦那が通っていた飲み屋に、“息子の同級生”の女の子が勤めていて。そこから仲良くなって、付き合っているらしいんです。つまり、不倫ですね。息子もそれを知って激怒。旦那と大喧嘩になり、いまは家族全員バラバラの状態です……」 　私は「そんな話はドラマでもなかなかない……」と思ったのですが、話は意外な展開に進み、他人事ではない気持ちになったのです。 　酔った勢いもあったのでしょう。彼女がとんでもないことを打ち明けます。 「旦那の愚痴を私の地元の後輩の男の子に話すようになりました。彼は10歳以上も年下ですが、そんな面倒くさい私みたいなおばさんの話を、いつも親身になって聞いてくれて、一緒に泣いてくれたり……。今の私にとって、神様みたいな存在なんです。 　私は精神的に参ってしまって15キロ以上痩せてしまったんですが、『美味しいお店があるからご飯食べに行こうよ！』と言って、頻繁に誘ってくれます。彼が美味しそうに食べているのを見ると、なんだか食欲が湧いてくるんです。彼といると、安心感で包み込まれる感じがして、このままずっと彼と一緒にいたいと思うようになりました。正直、彼のことが好きになってしまいました……」 　客観的に見れば、これは“W不倫”の状態です。私はかける言葉が見つからず、ただただ、聞いているだけでした。