残業にならない「連日の接待」にウンザリ…「残業代を請求できるケース」を知っておきたい
組織で働く人なら誰しも一度は目にしたことがある「就業規則」。しかし、入社時に人事から説明を受けたきり、その後しっかりと目を通す人は少ないかもしれません。
コロナ禍を経て、会社に行くのは月に数回という人もいれば、毎日定時から定時まで会社にいる人など、現在日本社会では多種多様な働き方が定着しつつあります。しかし、法律は簡単に変えられないため、現状に対応できていない場面も多くみられます。労務にまつわる様々な法律と、企業で定められた「就業規則」の間にはセーフかアウトか悩ましい「グレーゾーン」の問題が出てきます。
そんな職場の労務にまつわるモヤモヤとした悩みを社労士の村井真子さんが解説するのが、『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)です。本記事ではその一部を紹介していきます。
Q:顧客をもてなす連日の接待。これは残業ではないのでしょうか?
A:仕事としての接待は、残業として時間外割増が請求できます。
飲食を伴う「ビジネス会食」や休日の「接待ゴルフ」など、接待にはさまざまな形があります。自分の意思で行うこともあれば、上司に連れていかれることもあるでしょう。接待の場で契約獲得の根回しをしたり、参加したかどうかによって担当案件の数や質が変わるようなことがあれば、事実上の営業の場ともいえます。
接待と残業との関連でいえば、次の項目に当てはまるか否かが重要です。
① 自由意思で行くか行かないかが選択できない。
② 商談など、接待の場で仕事に強く関連する話し合いがある。
①と②がともに当てはまる場合、その接待は仕事の一部とみなされる可能性が高くなります。
例えば、上司に命じられて宴会場を手配し、当日は受付で参加者を迎え、会では司会を担当したり、仕事上のメールをその場で送信する場合は、仕事の色が濃くなります。そのため、時間外の接待であれば残業代の請求が可能と考えます。また、プレゼン後に顧客から直接フィードバックがあることを想定して、あらかじめ会食の場を設けることも仕事の性質が強いといえます。
一方で、接待が仕事としてみなされないケースもあります。ゴルフのように参加者にとってレジャー性が高いもの、取引先との関係強化のために自発的に行う飲み会などは、仕事との関連性が薄く、会社の指揮命令下にあるとはいえません。よって、時間外や休日に行われても残業代を請求することは難しいでしょう。
コロナ禍で増えてきたビジネスランチも同様です。一日8時間という枠内でのことであれば、仕事に強く関連していても残業代は発生しません(※1)。連日の接待は心身にも負荷がかかります。上司に対処法を相談してみましょう。
※1:ただし、こうしたビジネスランチが仕事の性格が強い場合は、その時間とは別に会社は労働者に休憩を与えなければなりません。
接待は残業に含まれないのか?
残業代を「請求できるケース」と「できないケース」の違い
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社会保険労務士、キャリアコンサルタント。家業である総合士業事務所で経験を積み、2014年、愛知県豊橋市にて独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所等での行政協力業務を経験。あいち産業振興機構外部専門家。地方中小企業の企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築、組織設計が強み。現在の関与先160社超。移住・結婚とキャリアを掛け合わせた労働者のウェルビーイング追及をするとともに、労務に関する原稿執筆、企業研修講師、労務顧問として活動している
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