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「東大よりも得だと思った」異端の精神科医が東大を蹴って“意外な進学先”を選んだ納得の理由

「患者が自ら学ぶ空間作り」には一定の意味がある

――精神疾患にかかった患者さんがより広い視野で自分の状況を捉えたり、あるいは状況を改善させていくためには、どんな手助けが必要だと感じますか? 益田:まず前提として、医師による精神医療の知識と治療は欠かせません。ただ、私が感じるのは、患者さんのなかには医師が補助線を引くだけで自ら改善させていける人がたくさんいるのではないかということです。現在の精神科医療は医師と患者さんがFace to Faceで治療を進めていくことを前提としていますが、患者さん自らが学ぶ空間を作ることには一定の意味があるのではないかと思っています。  自ら学ぶ方法は動画配信でもいいと思いますし、オンライン/オフライン問わず患者会などを組織することによっても効果は得られるでしょう。場合によっては、医師が学問的な根拠を示しながら話すことよりも、少し前にその段階を克服した患者さんの体験談のほうが効果的な場合さえあります。それはたとえば、スポーツにおいてプロ選手のプレーをみてもわからなかったのに、少し上の学年の先輩のプレーがヒントになり得ることと似ています。  オンライン技術の発達によって、具合の悪い人でも現地に行かずに繋がることができたり、その場で見なくてもあとで資料を確認することができます。まだ使われていない新しい技術を駆使することで、コストパフォーマンスを上げる余地はまだあると思います。

病を抱える人に寄り添うためには…

――実際に先生は患者会を組織されていますよね。 益田:患者会のメリットは、患者さん同士の集合知があるということです。臨床現場で遭遇する精神疾患と社会問題が表裏一体であることはすでにお話しましたが、社会問題を解決するためには多面的なアプローチが必要です。医学分野の知識だけではなく、法律だったり社会福祉だったりさまざまな知識を要するため、患者さんの経験を交換し合うことが大切になります。  また、そこで得た知見を、実際の社会政策に反映できるように声をあげることも重要だと思います。今私が改善したほうがいいなと考えているのは、医療と福祉の連携です。鬱病で休職した人が復職するためのトレーニングを行う場所や、退職したあとの就労移行支援の連携ももう少し効率良くできるのではないかと感じますし、東京都では助成金で受けられるカウンセリングの上限回数が少ないので治療が奏効しにくいなどの問題もあります。  日本は資源が少なく福祉国家にはなり得ないので、現在ある社会資源を効率的に運用していくことで、病を抱える人たちに寄り添っていくことができるのではないかと思います。
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“仕組み”によって改善していくのが健全
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