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「東大よりも得だと思った」異端の精神科医が東大を蹴って“意外な進学先”を選んだ納得の理由

“仕組み”によって改善していくのが健全

――精神疾患を抱えている患者さん、あるいはそれを取り巻く環境について、思うことがあれば教えてください。   益田:当たり前ですが、患者さんは自分の状況を俯瞰できません。多くの場合、自分の努力不足でこのような状況に陥っていると思いこんでいます。  しかし、実際には精神疾患の発症は遺伝子と環境ストレスによって引き起こされます。従って、自分ではどうしようもない因子によって苦境に立たされているのです。  ところが、社会の風潮はそれを許しません。自由競争社会においては、まず「みんな同じスタートライン」という建前から始まります。持っている遺伝子も生まれた環境も、どれも一つとして同じものはないのに、そこは無視されて、自己責任論だけが強調されます。  だから患者さん本人も「自分が悪い」という自責に落ち着いてしまうのです。私は、少なくとも本当のことを知る機会だけはなるべく平等に得られるようになればいいなと考えています。そして、精神科医個人の“優しさ”や“情熱”だけに頼るのではなく、社会政策を始めとする“仕組み”によって改善していくのが健全なのではないかとも考えています。 =====  社会という実態の見えづらいものからの疎外感を持つ人は多い。周囲から「変わっている」と言われ続けた精神科領域の異端児ともいえる益田氏の提案は、システマティックでクールでありながら、ほとばしるほどの熱を帯びている。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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