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「コンビニでバイトするほうが全然儲かる」プロの人気作家が明かす“夢の印税生活”のリアル

「単行本を1冊出したからといって食えるほど甘くない」

がま口財布を持って悩む女性 そして2015年、応募総数日本一の電撃小説大賞から選出され、『さよなら、君のいない海』(KADOKAWA)で小説家デビューを果たした。単行本はのちに文庫化もされたという。 「広告制作の会社を辞めたのは、その1年後くらいですね。当時30代後半で収入面は同年代の会社員の倍ぐらいもらっていたんですけど、やっぱりちょっと1回、仕事人生を仕切り直したくて、なんとか食えるだろうと思って辞めました。ただ、結論から言うと小説だけでは食べられませんでした。単行本を1冊出したからといって食えるほど甘くなかったです(笑)」 「単行本の場合、5000部で黒字ラインに立つそうですが、大手出版社でも文庫本を出すときは、なかなか5000部も刷ってもらえません。契約内容にもよりますが、新人作家がもらえる印税は8〜10%で、700円の文庫本を発売するとしたら税金の問題などは抜きにして単純計算で1冊70円。3000部刷ってもらっても1冊あたりの収入は21万円ほどです。売れている作家でも基本的には年3〜4冊ペースが限界ですから、コンビニでバイトしたほうが全然稼げる計算です」

実際は“兼業”の小説家が多い

秀島迅

秀島迅氏

 自由業と呼ばれることもある作家・小説家だが、業界の慣習としてデビューから3年ほどは他の出版社から小説作品を出せないというケースもあるそうだ。そのため小説家としてデビューを果たしてからも“別の本業”とのハイブリッドなかたちで働き続けるうち、2作目が刊行されぬまま小説家を辞めてしまう人がほとんどなのだとか。つまり、それほど厳しい世界だという。  また、「著書が50冊あれば印税だけで生活ができる」とも言われているらしい。雑誌やWebメディアの記事などの単発の仕事よりは、将来的なストック収益型のビジネスとして夢がありそうな気もするが? 「デビューして10年で60冊くらい本を出したほど筆が早い仲の良い作家がいるんですけど、その人はいわゆる“印税生活”を送っていますね。ヒット作が10冊以上あれば、先ほどと同じような計算式で100万、200万くらいの不労所得が手に入るようなイメージでしょうか。逆に言えば、それくらいヒット本に恵まれていないと印税生活は送れません」 <取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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