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大規模特殊詐欺「ルフィ」を壊滅させた2人の女⑤〜かけ子で2000万円を”売り上げた”女

売り上げ2000万円

 2か月で2000万円の“売り上げ”を計上した。かけ場でも他を圧倒するほどの成績をあげ、「エース」と呼ばれるようになった。いつしか、ルフィグループの幹部から特別扱いを受ける。地元有力者への接待などにも連れ出されるようになり、「幹部」と目されるようになった。  フィリピンでの「出世」に山田は生きる意味を見いだした。  しかし、特殊詐欺を長く続ける考えはなかった。巨額の“売り上げ”に結びついたときはアクセサリーなどをもらうことはあっても、報酬がなかったのだ。ましてや成功するたびにインセンティブを受け取るようなこともない。風俗で働いていた時のほうがまだマシだ。足を洗って帰国したい――。率直な思いを藤田に伝えたこともあった。するといつも優しかった藤田が激昂した。 「そんなことが許されると思ってるのか! 警察にタレ込むぞ!」

リンチ動画を見せられ

 ある日、藤田の統括するかけ場から、脱走者が出た。藤田は焦った。もし、警察にでも駆け込まれたら、一巻の終わりだ。グループは四方八方手を尽くし、脱走者をつれ戻したのだが、その数日後、かけ場のメンバーが見せられたのは目を覆わんばかりの動画だった。脱走者が藤田から暴行を受ける「リンチ動画」。明らかな見せしめだった。  別の日、さらなる脱走者が出た。その後幹部から「あいつは心臓発作で死んだ」とだけ伝えられた。凶暴な藤田のことだ。殺したのでは、という疑念が山田の頭から消えることはなかった。  気づいたときにはかけ場は、恐怖に支配されていた。  来る日も来る日も朝8時から、時には深夜まで電話をかけ続けるしかない、休みなく受話器を握るかけ子たち。奴隷のようになっていたーー。 (次回に続く) 取材・文/SPA!特殊詐欺取材班 写真/PIXTA
『週刊SPA!』誌上において、特殊詐欺取材に関して、継続的にネタを追いかける精鋭。約1年をかけて、「ルフィ」関係者延べ百数十人を取材した
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「ルフィ」の子どもたち 「ルフィ」の子どもたち

「ルフィ」事件にかかわった
実行犯12人の素顔

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