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大規模特殊詐欺「ルフィ」を壊滅させた2人の女⑦〜フィリピンからの遠隔犯行を一部始終見ていた女

裁判での異例の説諭

判決を言い渡した裁判官は静かに聞き入っていた柴田にこう語りかけた。 「公判を通じて感じたがあなたは高い能力を持っている。それを社会で活かしてほしい」

写真はイメージ

 詐欺事件の片棒を担いだ被告に「あなたは能力がある」と裁判官が認め、諭すこと自体相当異例と言っていいだろう。しかし、裁判官の紛れもない本心だったのではないか。  山田もそうだが、柴田は「自分の人生には先がない」と決めつけた結果、夜の街から抜け出すことをしなかった。それは家庭環境であったり、社会から受けた「仕打ち」が2人の中に澱のように沈殿し、その後の生活に影響したことは間違いないだろう。その澱から抜け出そうとしたとき、手を差し伸べたのがルフィだった。 そんな2人は皮肉にも、居場所を与えられ、仕事を与えられ、ルフィから必要とされる存在となっていった。 それが詐欺グループだったとしても、大いに求められたのだ。  しかし、もし違うきっかけがあり、それが「日の当たる場所」であったとしたら、2人は今回と同様、必要とされる人であったのではないか。「能力がある」と裁判官が言った時、筆者もそう感じた。    彼女たちは間違いなく普通の社会でも「必要な人」になれたはずなのだ――。 (了) 取材・文/週刊SPA!特殊詐欺取材班 写真/PIXTA
『週刊SPA!』誌上において、特殊詐欺取材に関して、継続的にネタを追いかける精鋭。約1年をかけて、「ルフィ」関係者延べ百数十人を取材した
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「ルフィ」の子どもたち 「ルフィ」の子どもたち

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