ニュース

キリン「氷結無糖」の“成田悠輔氏”広告取り下げが起こった本当の理由

コモディティ化・価格競争を避けるために

 松下氏の指摘する「万人受けを狙った際に起こる問題」とは、様々な産業で問題視されているコモディティ化だ。 「戦後、至るところでモノが不足していた日本では、どの産業でも量産することが大きな命題でした。ニーズがあるため、作った分だけ売れるという経験をした日本経済は、高度成長期に入ると、次々と前作よりも性能のいい商品を製造・販売しました」  やがて、日本中にモノが行きわたってニーズが落ち着くと、商品が売れ残るように。しかし、ニーズはなくても開発・製造は止まらず、どの市場でも同レベルの高品質な商品があふれるようになり、価格競争がはじまった。 「ニーズなき今、万人受けを狙った商品は、どんなに知名度が高くて、性能がよくて、リーズナブルであっても、選ばれるとは限りません。モノがあふれている現代では、知名度・機能性・価格は、購入する理由にはならないのです」

これから必要なブランディング戦略

「今の日本でモノを買う際に重要視されているのは、商品を製造・販売する企業やブランドの考え方や姿勢に共感できるかどうか、という点です。言いかえると、企業側は、自分たちの信念や在り方に共感してくれるファンづくりに重点を置かなければならない、ということです」  もうひとつ、忘れてはならないのが、今回の氷結無糖のような失敗は、どの企業でも起こりうることだと、松下氏はいう。 「コモディティ化を避けるために、ユニークな戦略を打つことは理にかなっていますが、そこには必ず覚悟が必要になります。中途半端なことをしてはいけません。また、SNSで上がった声は、一部の消費者のものにすぎません。その何倍もの消費者は声を上げないだけで、常に動向を見られているということを忘れずに、きちんと自社と向き合い、ブランディングを研ぎすましていただきたいと思います」 <取材・文/安倍川モチ子>
経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者。株式会社SKY PHILOSOPHY 会長。40年近く、企業アイデンティティーやブランドコンセプトの確立を専門とし活動。2011年より「真のブランディングを世に伝える」ことをミッションに、講演、講師、コンサルティングを行う。2024年、著書『共感ブランディング®ドリル』で、自身の体系的オリジナルロジックを一般公開。ブランディングのわかりやすい実践書として高評価を得ている
1
2
3
おすすめ記事