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旧統一教会2世の元セクシー女優が“出演を決意した”経緯「罰せられたいという願望が強かった」

苦痛を脳内で変換しなければ「精神がもたなかった」

桃瀬ゆり氏

似た境遇の人たちと「自分の人生を生きる方法」を模索していきたいそうだ

 自己否定感の強かった20歳までの自分から脱皮し、性を愉しめるまでになった桃瀬氏。しかし回復までの道のりはまだ遠いのだと話す。 「辛いこと、痛いこと、嫌なことを『気持ちいい』と脳内で変換しなければ、たぶん私は生きてこられなかったのだと思います。苦痛を苦痛だとそのまま認めたら、精神がもたなかったでしょう。だからどこかで、今でも『悲惨な目に遭っている自分』の方が落ち着くというのはあります。これまで交際してきた人からもDVを受けたり、ぞんざいに扱われたり。でもどこか、それが自分の平熱になってしまう。  そんな状況を受け入れていては、幸せになれないですよね。それはもうやめようと思っています。これからは、似た境遇の人たちのために自分をさらけ出して語り、どうすれば自分の人生を生きられるのかを一緒に考えたいと思っているんです。そのため現在は、虐待サバイバーの人たちが集うNPO法人にも出入りして勉強をさせてもらうなど、活動の場を広げています」  自我を持つことさえ許されなかった境遇から抜け出し、桃瀬氏は自らの人生を手繰り寄せようとしている。その基軸になったのは、間違いなく性へのエネルギーだ。 「まともな人たち」からは眉をひそめられ、後ろ指をさされることでしか、心の穴を埋められない。行儀のいい人生からかけ離れた、侮蔑の対象となる選択の連続。しかし社会で不道徳とされる価値観や振る舞いが、寄る辺ない人々の心を救うことはある。教科書的な善悪では語れない、悩んでもがき抜いた人間にしか見えてこない拠り所が、この世界のどこかにきっとある。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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