高校時代の“目の整形“が転機に…今では「一晩800万円売り上げる」敏腕経営者が明かす過去
そのバーは宮城県仙台市青葉区にある。women only bar『楽園』、いわゆるレズビアンと呼ばれる性的指向の女性が夜に憩う場だ。
オーナー兼キャストのヒノヒロコ氏(32歳)は、一晩に800万円もの売上を打ち立てた伝説を持つ敏腕。身体の至るところに刺青を入れ、唇に厚めの紅を引く彼女にはファンも多い。笑顔は自信に満ちているかに思える。だがヒロコ氏がそのセクシャリティに正面から向き合い、自由な表現活動をするまでには、試行錯誤があった。「常に大きな劣等感を抱えていた」――そう語る彼女の生涯に迫る。
ヒロコ氏はBar経営者のみならず、パフォーマーの顔も持つ。芸術系大学の大学院を修了した筋金入りだ。専攻はパフォーマンスアート。描画などと異なり、自らの身体表現をそのまま作品とするジャンルだ。
「メディアに紹介していただいた作品としては、“嘔吐”をテーマとして口に含んだペンキを吐き続けるというものがあります。LGBTの象徴として、レインボーフラッグが有名ですよね。そういう多様性が容認される社会を私も歓迎しますが、実際には、虹のような明確で爽やかなものではなく、もっと混沌とした色なのではないかと私は思って、考えを表現しました」
誰からの成約を受けるわけでもなく、自分なりの表現を伸びやかに行う。ヒロコ氏の生き方は自由さに満ちているように感じるが、過去には壮絶な体験もした。
「小学校のときはいじめられていて、まったく友達がいなかったですね。身体に対する暴行としては、上履きのなかに画鋲を入れられる程度のことだったのですが、私が何かを発言するとクスクス笑われて。教室は存在をずっと否定される空間でした」
だがその経験は、こんな場面に生きてきた。
「小学校の頃は誰も話す人がいないので、木の根っこと会話していたんですよね。イマジナリーフレンドというらしいんですが。その経験を絵本にして、大学の卒業制作では提出しました」
進学先の中学校でも男子からの執拗ないじめを受け、逃げるように高校は女子校に進学したという。
「高校はスクールカーストが明確にあって、私はもちろん底辺です。でも、2年生の夏休みに転機がありました。夏休みにみんなで染めた髪の毛を私だけ戻さずに休み明けに登校したら、周囲から『あいつ、やるな……』って一目置かれだして(笑)。そこから、見た目を派手に装うことで、人から虐げられないことを覚えた気がします」
見た目を変えれば、周囲の目が変わる。その体験は、ヒロコ氏をこんな行動に向かわせた。
「同意書の親のサインを偽造して、ずっと同級生からからかわれてきた目を整形しました。細い目がずっとコンプレックスだったんです」
小学校のときは「まったく友達がいなかった」
“スクールカースト底辺”から逆転した出来事
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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楽園:WEBサイト
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