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話題のドラマ『錦糸町パラダイス』に地元民が感じた本気。物語の背後に透ける“現実の事件”

錦糸町ならでの社会問題の描き方がリアル

夜のダービー通り

西側から見た夜のダービー通り。ちょうど「錦糸町マルイ」の裏側にあたる

第3話と第4話では、錦糸町のフィリピンパブの摘発をきっかけに、不法滞在が発覚した母娘のことが描かれます。“夜のお店”の摘発は錦糸町では日常茶飯事で、たとえば昨年には、未成年を勤務させていたことが判明したガールズバーで、午前4時の「摘発劇」が実際に繰り広げられました。 また、親がアジア系外国人で、本人は日本で生まれ育ったという同級生がいる状況も、錦糸町で育った私には納得感のある設定でした。第3~4話のエピソードは特定の事件をモデルにしたわけではないかもしれませんが、錦糸町だからこそリアリティの出る筋立てだと思います。 ドラマに関係する「特別在留許可」は、現在も問題にさらされている方々が多くいるようです。つい1年前の2023年8月には、在留資格のない外国人の子ども約140人に特例として「特別在留許可」が出されることが、「異例の対応」としてニュースになりました。これに関係する方々が錦糸町の南側に多くいるであろうことは、住民として肌感覚で理解できます。 第5話は「仕事と家庭」というもう少し普遍性のある話題でしたが、おそらく第6話以降も“身近な”社会問題にリアルに切り込みながら、それをフィクションに重ね合わせることで、かえって現実を照射するような構成で物語は進んでいくと思います。何か大きな“闇”を抱えていそうなルポライターの坂田も、おそらくこうした文脈で大きな問題提起をすることになるのでしょう。個人的には彼が、しっかり現地に足を運んで取材しているという部分には共感できるところがあり、そうした理念もドラマ制作陣の考えを反映してのものではないかと感じられます。

夏と秋こそイベント目白押しの錦糸町に来るチャンス!

そのほか事件だけでなく、かおる(光石研)となみえ(濱田マリ)がDJを務めるラジオ局は、外国人観光客に人気のマリオット系列のホテル「モクシー東京錦糸町」がロケ地に、MEGUMIが女将をしている居酒屋は、ディープなエリアにある炭火焼き居酒屋「力屋」がロケ地になっていて、お客さんとして実際に訪れることができます。大助の恋人の心音(さとうほなみ)が店員をしている喫茶店「デルコッファー」も、錦糸町からやや離れた本所吾妻橋という地区に、そのままの名前で実在します。 ドラマのロケ地の多くは錦糸町南側の限られた地域に集中しているので、気になった方はプチ観光気分でぜひお越しになってみてください! 前述した10月の「すみジャズ」が待ちきれない!という方は、「すみジャズ」よりさらに長い40年ほどの歴史をもつ「すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」(通称「河内音頭」)もおすすめです。毎年8月の最終水・木曜の2日間(今年は28・29日)の夜に、「モクシー」からほど近い竪川親水公園で開催されます。「盆踊り」といっても生唄生演奏をする巨大ステージが特設される音楽フェス的なイベントで、酒類を含む飲食店の出店も多いので、錦糸町の夜のひとときを存分にご堪能いただけると思います。 <取材・文・撮影/あおきゆうすけ>
ギリギリ昭和生まれの下町生まれ下町育ち。酒と温泉と一人旅をこよなく愛す。好きな酒はビールと焼酎とウイスキー。
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