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あの頃、俺たちはハングリーだった 『劇映画 孤独のグルメ』公開記念・松重豊×甲本ヒロト特別対談

デモテープを聞いた瞬間、涙

――松重さんは甲本さんに、どのように依頼なさったんですか? 松重: 「腹減った俺らの歌を作ってほしい」ということと、「ボ・ディドリー・ビート(編註:アメリカで50〜60年代に活躍したR&Bミュージシャンのボ・ディドリーが生み出したシンコペーションの音楽リズムのこと。強力なリズムを基調とした独特のサウンドは今もロックやポップスで広く使われている)で」って無茶ぶりをして。本来なら、ヒロトはそんなオーダーに応えるようなことはしないんですよ。 甲本: できるならするけど、僕にはそういうスキルがない。だから依頼されても、「すみません。思っている通りのことはたぶんできないと思います」という断り方をするか、「何か出しますけど、(気に入らなかったら)ボツにしてください」という関わり方しかできない。だから僕の曲は何度もボツになっています。それだから、今回は本当に特別。それは高飛車な意味ではなく、こんな特別なタイミングだったらやらなきゃいかんだろうと。
松重豊×甲本ヒロト対談

同郷のふたりの会話には自然と方言が混じる

松重: そんな特別な曲を書いてもらって、映画も大きな劇場でいろんな人に観てもらえる。奇跡的に物語が繋がったことが嬉しいし、それに応えてくれたヒロトには感謝しかない。 甲本: 僕はできんかったら謝るつもりで、ダメもとでやったんですけどね。ええのができたと思って、部屋で小躍りして(笑)。めっちゃ自信があったんだけど、送る時は「どうかな?」ってちょっと控えめな感じでね。 松重: そのデモテープ、ギター1本でヒロトが「腹減った、おいおいおい」ってね。いま僕はぬけぬけと「監督だ」なんて言ってるけど、40年っていう時間をすっ飛んであの頃の気持ちに戻れて、正直、聞いた瞬間泣きました。翌日、撮影中にみんなでデカい音で聞かせてね。「これができた!」と言って、みんなで雄叫びをあげたのが、もう最高の瞬間だった。とにかく耳に残るから、1回聞かせただけでみんな口ずさむんですよ。そういうのって、テーマソングにするには最高じゃないですか。

ハングリーとは満たされた上での飢餓感

――確かに口ずさみたくなります。 松重: あの頃いつも飯に困っていた俺らが今、腹減ったって曲に乗せて、腹減ったって映画を観てもらって。やっぱり、腹減ったってすべての基本というか。 甲本: 人間は常に空腹と共に歩いているから。 松重: うん。さっき喰ったのに、何時間もすればまた腹が減ってる。 甲本: 飢餓感っていろいろあるやんか。ロックンロールでいうところのハングリーとか。で、そのハングリーは貧乏とは違う。貧乏な人はエレキギター買えんからな。エレキギターを持ってハングリーっていうのは、満たされた飢餓感なんよ。全部あるけど「足りんのよ」っていうのが本当のハングリーだし、普段感じる「腹減った」もハングリー。 松重: そういう飢餓感があるからこそ、ああでもないこうでもないって何とか工夫して、物を作り出して。やっぱり飢餓感って大事よな。それを改めてヒロトと共有できたことが、かけがえのない体験というか。 甲本: いやいや、まずあのドラマがええよ。そして、映画も最高。それだけです。
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ヒロトの人生最高グルメは?
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