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歯周病は「放っておけばいい」と思っている人に訪れる悲劇

脳梗塞のリスクも2.8倍に

歯周病

歯周病の影響で歯茎が腫れている。全身疾患は歯周病の大きなリスクである

狭心症や心筋梗塞と同様に、歯周病菌は脳の血管にも悪影響を及ぼし、歯周病の人はそうでない人の2.8倍も脳梗塞になりやすいといわれています。 高血圧や脂質異常症などすでに脳梗塞のリスクを抱えている人は特に歯周病の治療は必須だと思ってください。

様々な疾患の原因となる肥満も歯周病と密接な関係

詳しいメカニズムは解明されていないのですが、歯周病によって歯茎の炎症が悪化すると体内に出てくるタンパク質は、血糖値を調節するホルモンやインスリンの働きを阻害して血糖値を上昇させるといわれています。 また、肥満の人はそうでない人と比較して3.4倍、重度の肥満の人は8.6倍も歯周病になりやすいことがわかっています。 つまり、糖尿病、メタボリックシンドローム、歯周病には密接な関係があり、どれかが生じると、どれかに悪影響を及ぼすような関係性なのです。 歯周病も生活習慣病の一つですが、他の生活習慣病の悪化をさらに進めてしまいます。

歯周病が全身にもたらすリスクは計り知れない

歯周病

歯周病が進行し、かつオーラルケアの状態も悪いお口の中。これでは全身の健康を脅かすリスクが高いといえる

今回ご紹介した歯周病と関連する病気は一部にしかすぎず、関節炎や腎炎、低体重児出産、誤嚥性肺炎など多くの疾患との関連性が示唆されています。認知症など、完全に関連性があるとはされていないものの、現在研究が進んでおり、これから関連性が明確になるであろう疾患もたくさんあるのです。
健診

※写真はイメージです

お口と全身は切り離されて考えられがちですが、お口は全身の入り口であり、血管を通じて全身と繋がっています。歯周病の裏には自分の健康を大きく脅かすような疾患が潜んでいることを知り、全身だけでなく歯周病予防にも目を向けてみてください。 <文/野尻真里>
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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