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歯医者が警告、歯磨きで“歯間清掃”しない人は「歯磨きをしていないのと同じ」/歯科医師・野尻真里

みなさんは今日、歯磨きをしましたか? 歯磨きをしないという患者さんは現在ほとんどいらっしゃいません。多くの人が朝晩の歯磨きをしています。 では、“歯間清掃”はしましたか?
野尻真里

歯科医師の野尻真里

令和4年の歯科疾患実態調査では、歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯間清掃をしている人は全体で50.9%ではあったものの、男性ではほとんどの年代で50%以下でした。

“歯間清掃”をしていないなら「歯磨きをしていないのと同じ」

どんなに良い歯ブラシを使用したとしても、歯と歯の間の汚れをとることはできません。つまり、どれだけ頑張って歯磨きをしていても、歯と歯の間が磨けていないことから、歯の病気に罹るリスクを予防できているとは言えないのです。 デンタルフロスか歯間ブラシでしっかりと歯と歯の間の歯面についた汚れをとる必要があります。ここで気を付けてほしいことが2つあります。

①歯と歯の物詰まりをとるのが歯間清掃ではない

歯と歯の間の歯垢

歯と歯の間の歯垢が歯垢染め出し液でピンク色に染まっている

まず一つ目は、歯間清掃は、歯と歯の間の物詰まりを取るのが目的ではないということです。 ある患者さんは、歯間ブラシを使用されていましたが、歯と歯の間の歯面の汚れが落ちていませんでした。 ただ歯の間に入れて抜くだけでは、歯間ブラシを使っていないのと変わりません。歯間に入れたら両側の歯面をゴシゴシと擦ることで、歯にこびりついているプラーク(歯垢)が落ちます。
歯間ブラシ

歯間ブラシは歯と歯の間の面を磨くことがポイント

歯間ブラシのサイズは歯科医院で自分に合ったサイズを確認をするのが正解です。サイズが小さいとしっかりと汚れが落とせなかったり、サイズが大きいと歯茎を傷つけてしまうためです。 デンタルフロスの使い方も歯間ブラシと同様です。歯と歯の間に入れたら片側の歯の歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)に入れてゴシゴシしながら上に動かします。同じようにもう片側の歯面も磨きます。
デンタルフロス

デンタルフロスは両側の歯の“歯と歯茎の間”に入れてゴシゴシしながら上に引き上げる

デンタルフロスは使用法をしっかりとマスターしていれば、清掃効果が高いです。しかし、デンタルフロスを正しく使いこなすのはなかなか難しく、実際当院にいらっしゃる患者さんも使いこなすのに時間がかかります。特に歯と歯の間が広くなっている患者さんでは、フロスでのしっかりとした清掃が難しいです。 そのため歯間ブラシが入るのであれば歯間ブラシを使用した方が、より清掃しやすいという論文(※1)もあり、それは実際の臨床でも実感するところです。 デンタルフロスしか入らない場合は、歯科医院で使用法の確認をしてみてください。 (※1)参考文献(Kiger RD, Nylund K, Feller RP. A comparison of proximal plaque removal using floss and interdental brushes. J Clin Periodontol 1991 Oct;18(9):681-684.)( Kotsakis G, Lian Q, Ioannou A, Michalowicz B, John M, Chu H. A network meta-analysis of interproximal oral hygiene methods in the reduction of clinical indices of inflammation. J Periodontol 2018; 89:558-570.)
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歯間清掃は“歯磨きの前にする”
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一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari

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