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焼肉店の倒産が過去最高。「牛角」「安楽亭」「焼肉ライク」が苦しむ中、“一人勝ち”するチェーン店が。明暗が分かれたワケ

 帝国データバンクによると、2024年度の焼肉店の倒産件数は55件。過去最高を更新しました。出店ラッシュと食材価格の高騰で経営環境は厳しく、大手チェーンの閉店も目立つようになっています。  本記事では中小企業コンサルタントの不破聡が、明暗が分かれる焼肉店の現状をレポートします。
焼肉きんぐ

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なぜ牛肉価格は高騰したのか

 焼肉店は原価率が40%程度と、居酒屋などほかの飲食店と比べて割高なのが特徴。輸入牛肉の高騰は痛手でした。2024年度の輸入牛肉の人気部位は2020年度比で1.8倍程度にまで上がっています。人気のタンは一時2倍近く上昇するなど、焼肉店の頭を悩ませてきました。  牛はもともと鶏や豚などと比べて育成期間が長く、価格は高くなりがちでした。そこに、世界最大の生産地の一つであるアメリカで干ばつが頻発。牧草が慢性的に不足し、畜産農家が生産頭数を減らしたのです。そして日本ではインバウンドも相まって、牛肉の需要が急増しました。特に希少部位であるタンは日本だけでなく中国でも人気となり、取り合いとも言える状況になりました。さらに円安による購買力の低下も価格高騰に拍車をかける結果となったのです。  野菜の価格高騰も深刻な影響でした。キャベツは一時、平年の3倍程度まで上昇。猛暑と少雨が影響したと見られています。人件費、水道光熱費、どれもこれもが上昇する中で、これらの負担が収益性を圧迫した結果、閉店を余儀なくされる焼肉店が続出しました。  集客においては、ひと段落した印象です。日本フードサービス協会によると、2024年の焼肉店の客数は前年比3.4%の増加でした。しかし、2025年3月の客数は1.7%減少しています。

顧客至上主義をやり切った「焼肉きんぐ」が一人勝ち

 人気焼肉チェーンが急拡大するきっかけを作ったのは、コロナ禍かもしれません。“一人焼肉”という新たな業態で勝負をしかけた「焼肉ライク」、各テーブルにレモンサワーのサーバーを設置した斬新なスタイルの「ときわ亭」が、短期間で100店舗を突破。  コロナで居酒屋は大苦戦を強いられた一方、焼肉店は好調が続きました。しかし、居酒屋の需要が回復するに伴い、焼肉店が勢いを失ったのは皮肉なものです。  データ提供サービスを行う日本ソフト販売は、焼肉チェーンの店舗状況を調査しています(「【2024年版】焼肉チェーンの店舗数ランキング」)。それによると、「焼肉ライク」は94店舗から84店舗に減少、「ときわ亭」は109店舗から98店舗まで減りました。2つともに100店舗を下回っています。
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大手チェーンでは「焼肉きんぐ」が独り勝ち
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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